古代エジプトの王朝をテーマにした競り&バーストゲーム。王朝の歴史を後世に伝えよ!(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
誰が勝てるのか見えている、変わった競りゲーム。ラウンド毎に異なる時代の王朝を作り上げるテーマなんだけど、過去が遺跡や記録として引き継がれていくのが面白い!!
Geek御用達ブランドAleaの最初のゲーム。競りゲームの古典であり一つの到達点。
「競り」と「バースト」が、絶妙なバランスで組み合わされたゲームかなぁ。神(ラー)の意志を袋引きの仕組みで表現していて、鉄槌を下されるプレーヤーの悲喜こもごもが見どころですね。
NEZおすすめ度: | (7.0 / 10) |
あんおすすめ度: | (8.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (7.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
NEZのレビュー
誰が勝つか見えている競りゲーム。競りを開始するタイミングの駆け引きが面白い!
エジプトの3つの時代で王朝を作り上げていく競りゲームです。
手番では、袋からタイルを引いて中央の競り場に置くか、競りの開始を宣言するかどちらかを行います。袋から出されたタイルは累積していき、全てのタイルがまとめて競りの対象となります。
そして、このゲームで独特なのが競りで使用するコインです。通常、競りゲームでは手持ちのお金を好きなだけ入札に使用する事が出来ますが、ラーではコイン自体に異なる数字が書かれており、競りでは自分の手元のコインを1枚選んで入札を行います。さらには、このコインは公開情報なので、全てのプレイヤーが落札できる金額があらかじめ分かった状態でゲームが進んでいきます。
毎ラウンド落札できる回数が決まっているため、相場観は金額ではなくタイルの内容で決まってくると言うのがこのゲームの面白いところです。つまり、少額のコインであれば、競り場のタイルが少ない状態で競りの宣言をして、高額のコインを持っているプレイヤーの入札を躊躇させれば良いと言うような駆け引きが発生します。
タイルの中には獲得したタイルを破棄させるような物も入っているため、「あのプレイヤーは今の競り場でタイルを獲得するとデメリットの方が大きそうだ。多分、入札には参加してこないだろう。」と言ったような駆け引きも楽しめます。
競りで落札するとタイルと同時に、競り場に置かれたコインと使用したコインを入れ替える必要があり、入れ替えたコインは次のラウンドで使用する事になります。よって、タイルの内容ももちろんなのですが、自分が次のラウンドでいくらのコインが使えるのかを考えていく必要もあります。
もう1つの面白いポイントは、袋引きに対してバーストの要素があるところです。タイルの中には『ラー』タイルと言うものが入っており、これが規定数袋から引かれると強制的にラウンドが終了してしまいます。最後まで残ったプレイヤーは袋からタイルを引き放題になりますが、ラーを引きすぎると何も獲得出来ずに終わってしまうので、ギリギリを攻めるチキンレースの様相を呈します(破棄タイルの存在も嫌らしいですね。
タイルは様々な得点要素となっており、さらにはラウンドごとに手元から無くなるものとゲームを通して累積するものがあります。
<手元に残るもの>
★ファラオ(最多で得点、最小で減点)
★モニュメント(セットコレクション&同じものを集めるとゲーム終了時に得点)
★通常のナイル川(氾濫ナイル川タイルがあると得点)
<手元に残らないもの>
★お金
★氾濫ナイル川(これがないとナイル川は得点にならない)
★神々の恩恵タイル
★技術(セットコレクションだけど、1枚も無いと減点)
個人的には、この残る物のセレクトが非常に気に入っています。
モニュメントはアブシンベル神殿やスフィンクス、ピラミッドなどのように後世まで遺跡として残っていますよね。ナイル川もエジプトにとって母なる大河。ナイル川の氾濫は一時的ですが、こちらも永久不変のものです(ちなみに、ピラミッドの建設はナイル川の氾濫期に、農業ができない農民の仕事としてあてがわれたと言う話もあります)。ファラオも壁画などに記録され、現在でも遺跡の中に点在しています。
総じて、ゲームの世界観とシステムがマッチした、とても面白い作品だと思います。
ただ、世界観は大事なのですが、得点チップが分かりにくいのだけは何とかならないかなと思います。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
あんのレビュー
太陽神は競りがお好き。
RA は、古代エジプト時代を背景として太陽神ラーにより各種のシンボルが描かれたタイルを競り落としていくという不思議なテーマのゲームです。なぜこのようなテーマになったのかはよくわかりませんが、一種独特な魅力をゲームに与えています。
そのような摩訶不思議なテーマとは裏腹にゲームシステムは非常にドライであり、それでいて多彩な展開を生むデザインがされています。
プレイヤーは3つの選択肢から1つを選び手番を行います。
・新たなタイルを引き、オークショントラックに並べる。
・RA宣言をしてオークションを始める。
・神タイルを使う。
メインのアクションは、各プレイヤーがタイルをオークショントラックに並べ、競り対象となるタイル群を作っていくこと、そしてそのタイル群の獲得のために競りを行うことです。
競りの対象となるタイルは、大きく8つのカテゴリーに分類され、それぞれのカテゴリーごとに得点体系や役割が異なっています。また、タイル群の中にはマイナスの価値のタイルも含まれます。そのようなタイルによりタイル群が作られるため、その価値は多面的になります。
その一方で、競りのシステムは、非常に簡素化されています。1から16までの数字が書かれた太陽チップをプレイ人数に応じて3枚または4枚を公開で持ち、1周のみの競りで勝者を決めていきます。各プレイヤーは、1ラウンドで最大でも太陽チップの枚数回しかタイル群を獲得することはできません。
タイル群の価値は多面的であるため、プレイヤーごとにその重みは異なります。また、各プレイヤーにとっても獲得するタイミングによって価値が異なります。限られた回数でしか落札できないタイル群をいつ獲得するのか、見る角度によって様々な価値を見せるタイル群を限られた回数しか落札できないことにプレイヤーは激しくジレンマを感じることになります。
このような簡素化された競りにより多面的な価値を持つタイル群を獲得していくことがRAの魅力であり、多彩な展開を生む源となっています。
競りゲームではプレイヤーが脱落しやすい傾向にありますが、RAでは競りに失敗してゲームから脱落する可能性は低く、競りが苦手な人でも十分にゲームに参加することができるようになっています。プレイヤーはシステムに保護され、最後までゲームへの参加を保証されています。
RAは非常に人気のあるゲームであり、数回パブリッシャーを変えてリプリントされています。また、「ラッツァ!」としてリメイクされています。
「ラッツァ!」は、テーマが古代エジプトからギャングに、また、タイルがカードに変更されています。最大の差異は、タイル数が3分の2ほどに減らされ、災害タイルにあたるものが収録されていないところです。
ゲームシステムはRAとほぼ一緒ですが、RAの最大の魅力であるタイル群の価値の多様性が減ったことで、ゲームの魅力が落ちてしまったと個人的には感じています。具体的には、災害タイルにあたるものがないことで、ゲームが薄味に感じてしまうなどといったところです。しかし、要素の少なさを歓迎する人もいますので一概に悪いリメイクであるとはいえないのかもしれません。
RAのシステムは、その後、変化していくつかのゲームで採用されています。
「イッツマイン」では、得点系統が異なるカードの山札を順次めくっていき、並んだカード群をリアルタイムで早取りするというふうに変わりました。ただし、各プレイヤーはゲームを通じて3回づつしかカード群を獲得できません。ゲーム終了時に、獲得したカードの得点計算を行い勝敗を決めます。
「ストロッツィ」では、1枚のカードにいくつかの得点系統が異なるシンボルが描かれており、そのカードをプレイヤー間で取り合っていきます。プレイヤーは同じ3枚のタイルを持ちます。それらを使ってカードを獲得しますが、ラウンドごとに各自3回しかカードを獲得できません。3枚のタイルのうちの1枚「海賊」は、使った時点で必ずカードを獲得できます。それ以外のタイル「商品」「加速」を使った場合、「海賊」以外には必ず勝ちます。プレイヤーはパスをするか「海賊」を使うかの2択を迫られることになります。より一層競りのシステムは簡素化され、作成されるタイル群は1枚のカードに集約されるように変わっています。
ギャングテーマのラッツァ!、カード群を早取りするイッツマイン、多彩なシンボルの描かれたカードを獲得していくストロッツィ。いずれも優れたゲームであり、ゲームとしてはRAと類似のシステムを採用しているのですが、RAの人気には及ばないというのが正直なところです。
ゲームシステムのバランスの良さが、第一にあるのは間違いないでしょう。
さらに、混沌とした価値の多様性、理不尽な神々の意思、そのようなものが古代エジプトのテーマとマッチし、独特の世界観ができていることも一因かもしれません。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
やすやすのレビュー
このゲームを遊んだ人だけが知る日本語、「ラーする(競りを始める)」。
競りゲームが苦手な方、わりと多くいらっしゃると思います。少なくともぼくにとっては苦手分野のひとつでして、その理由を小一時間突き詰めて考えた結果を述べると、それは「めちゃくちゃ考えた結果で競り負けるのがイヤ」ということでした…すみません、みんなそうですよね。最終的には自分の判断による結果ではあるんですが、相手の思惑ひとつですべてを覆されてしまう、といったところでしょうか。
きっとぼくは相手の手の内を推測することが不得意なんでしょう、「競り負け」たときは何か後ろから殴られた気になってしまい、それを予測できなかった自分に落胆するからなんだと思います。ま、要するに下手ってことですけどね。所持金非公開の競りゲームなんかはまさにそれで、ど真ん中のストレートを見逃したり、ボール球を強振したりして、試合後にひとりで勝手にスランプになる翻弄されたバッターみたいです。自分より一枚以上上手の相手には、手も足も出ませんね。
と、盛大に前置きておいて言うのもなんですが、「ラー」は競りゲームとして名高いですが、しかし遊んでみるとその感覚はかなり薄いです。もちろん競りなので、ある程度そういったぼくが感じる要素は含んでいますが、ラー固有の特徴がそれをマイルドにしているように見受けられます。
所持金は全公開されていて、ハードパスです。選択肢は、「参加しない」「最低貨幣を出す」「真ん中の価値の貨幣を出す」「最高貨幣を出す」の4択しかありません。そのため、自分が下家であればあるほど、競りにおける選択肢は狭まります。語弊を恐れずあえて例えるなら、「各人が出せる手が見えている後出しじゃんけん大会」っぽいです。
さらに競り後の展開は袋引きによるラーの意思(強めの運の要素)が働くので、早い段階で「思考のループ」を打ち切ることができ(るような気がする)、ゲーム的なピリオドが複数回あるため最後まで前向きにゲームを続けられますね。
一方、少し残念だなと思っている部分があります。それは、「得点の入り方が複雑」に感じるところですね、複雑というか直感的じゃないのです。タイルデザインの抽象化が上手くなく、ぼくの感覚ではそれが得点に結びつかないんです。サマリーがあったとしても「ん-と?」となってしまいそうなタイル周りのこのビジュアルや、よりスマートな得点方法のシステムがあれば良かったです。
古いゲームですし、そういった部分はルール説明時やゲーム中に再確認することで克服できると思います。初めて遊んだときは、「こんなシステムがあるなんて!」と驚きました。一度はプレイしてみてほしいゲームだなぁと思います。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (7.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |