決算日 / Zahltag

レビュー記事
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デザイナー: Franz-Benno Delonge
アートワーク: Atelier Wilinski
出版社Ravensburger(cited from)
参照 BoardGame Geek

公共事業への入札がテーマの競りゲーム。プレイヤーの入札額を見極めながら、突然訪れる決算日を切り抜けろ!(NEZ)

ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値

ヒゲ
ヒゲ

公共事業への入札なので一番安く入札したプレイヤーが競り落とすシステム。
手札のマネジメントがカギか?

NEZ
NEZ

土木事業への入札がテーマの競りゲー。安い方が競り落とせると言う通常の競りとは一味違った面白さ。突然やってくる決算日に阿鼻叫喚!

あん
あん

軽いプレイ感の中に現れる浮遊感。デロンシュのゲーム独特なプレイテイストが味わえる小品。

ヒゲおすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)
NEZおすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)
あんおすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)
Average:6 out of 10 stars (6 / 10)

各レビュアーによる個別レビュー

ヒゲのレビュー

デロンシュのゲームの持つ『ワンクッション置く』という独自性。

今は亡きフランツ・B・デロンシュのゲーム。
デロンシュの代表作は『コンテナ』、『フィヨルド』、『トランスヨーロッパ』あたりかな。

個人的には『ドス・リオス』好き。2人でぶん殴り合う感じ。

プレイ時間は60分未満。決算日のカードが出てこないと少し伸びるかも?
ベスト人数は3人。4人でもいいけどある程度他人の動向を見通せるのは3人までな気がする。

『決算日』は2002年のゲーム。
コンポーネントはカードとお金のチップだけで大変シンプル。
ルール部分の説明はいつも通り他のレビュアーに投げるとして…

個人的に面白いと感じたのは「手札を巡るジレンマ」です。
手番の終了時にめくられる契約カードには必要な労働力(クレーン車やショベルカーなど)が描かれており、入札に参加するためにはそもそも必要とされる労働力のカードを手札に持っていないといけない。
じゃあ、たくさんため込んでおけばいいじゃないかという話なんだけど、もちろんそんなことさせてくれないのがデロンシュのゲーム。

契約カードの山札から突如として登場する「決算日カード」がめくられたら、手札の枚数分(この表現はちょっと正確ではないけど)のお金を給料として支払わなければならないのです。

じゃあ、手札をいい感じに減らす手段はないかというと「契約を受注する」ことです。
契約を受注すると手札からカードを出して自分の前に置きます。これは手札とはみなさないので、決算日が来た時の支払いが少なくなるのです。もちろん契約を受注するとお金ももらえます。やったぜ。

よしよし。じゃあ、契約を受注できるようにするには…安い入札をしなければなりません。
ここがなかなかいやらしい。なんせお金は最終的には勝利点ですから。できるだけ高い金額で競り落としたい…でも、他のプレイヤーが安く入札したら自分は手札を抱えたままいずれくる決算日に怯えなければならない。ここが強烈なジレンマを生んでいます
ついでにいえば、安く入札をする動機付けがシステムとしてきちんと用意されている点はさすがだなと感じます。

私の初プレイの時でも、ここまでは頭が回りました。
でも、このゲームの神髄は「他のプレイヤーの持つカード」を把握できるようになってからだと感じます。

このゲームで勝つためには、契約を受注してお金をもらわなければなりません。
この利益を最大にしようとするなら、「自分しか受注できない契約」の時に最大値である”8”で入札してかっさらっていくのが最善手です。
…つまり、他のプレイヤー手札をカウンティングすることで自分のチャンスを活かすことになるのです。

詳しい説明は他のレビュアーに引き続き丸投げしますが、他のプレイヤーが契約を受注して出しているカードはいずれそのプレイヤーの手札に戻っていきます。


「今、クレーンのカードが2枚戻ったからあのプレイヤーはクレーン絡みの契約を取りやすくなったな」
「お、4枚のカードを要求する契約が出てきたけど、手札が4枚以上あるのは自分だけか…チャンス!」

こういう読みができるようになったら、このゲームをより深く楽しめるのではないでしょうか。

初回プレイ時、決算が2回くるまではプレイ感が掴みづらいゲームかもしれません。
しかし、分かってくると奥深く、悩ましいゲームだと言えるでしょう。

こんな人におすすめ

デロンシュのゲームデザインの独自性を体験したい方。
あるいは、フランクリン・ルーズベルト。

ルールの複雑さ:5 out of 10 stars (5 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:6 out of 10 stars (6 / 10)
運の要素:6 out of 10 stars (6 / 10)
おすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)
自分は好きですけ度:7 out of 10 stars (7 / 10)

NEZのレビュー

独特な競りと急にやってくる決算日。スマートとは言い切れないが、デロンシュ節が光る小箱。

病により若くして亡くなったデザイナー、フランツ=ベンノ・デロンシュ氏によるカードゲームです。テーマは土木事業への入札。なかなか渋いテーマです。

入札と言うだけあって、ゲームの骨子は競り。しかし、通常の値段をつり上げていくタイプとは異なり、最も低い金額を提示したプレイヤーが競り落とす形になります。お金をたくさん稼いだプレイヤーが勝ち。

プレイヤーには規定枚数の設備カードが配られた状態でゲームが始まります。手番は時計回りに回ります。手番プレイヤーは、まず手元の設備カードを更新します。要は増やしたり交換したり減らしたりです。

案件カード。必要な設備と数が書かれている。手札で該当のセットが作れなければ、そもそも入札に参加できない。右端はたまに案件の山から出てくる悪魔の決算日カード。

それが終わると案件の山からカードを引きます。案件カードには必要な設備とその数が書かれており、その案件をめぐって全員参加の競りが始まります。ここで重要なのは案件に示された必要な設備で、手札でそのセットが作れない場合は、そもそも入札に参加してはいけません(ちゃんと、それ用に0の入札カードが用意されています)

競りの内容は「うちならこの金額で受注しますよ!」と言う形での同時入札です。つまりは受け取る金額を自ら提示していくわけです。当然、一番安い価格を提示したプレイヤーが競り落とす事になります。そして、競り落としたプレイヤーは手札から設備カードを場に出してお金を受け取ります

プレイした設備カードはどうなるかと言うと、しばらくは場に残り続けます。具体的には手元に戻ってくるのは、次の次のあなたの手番開始時です。その間は受注した工事をやっている期間と思ってもらえば良いかもしれません。

プレイされた設備カードは場に残り、2周すると手番の開始時に手札に帰ってくる。(マニュアルには1周したら、カードを置く場所を変えろと書いてあるが、分かりにくいので木コマを買ってきて一周回ったカードの上に乗せてます)

さて、この作業中のカードですが、作業中なので当然競りに使えません(4人プレイなら最大7回の競りに使えません)。これには2つのポイントがあります。

1つは競りで相手が入札に参加できそうかどうかの指標です。たくさんの設備を必要としたり、特化型の案件が出た場合、場に何がプレイされているのか、そして手札が何枚残っているのかが重要になります。自分だけ入札可能だと分かれば、高い金額でも良いわけですよね。

もう1つは案件の山の中に紛れ込んでいる決算日カードへの対策です。決算日カードはいわば給料の支払いなのですが、手札のカードが支払いの対象になります!決算日カードが公開されたタイミングで仕事に出ている職人たちには給料を支払わなくて良いのです!

ちなみに決算日カードがめくれた時に、手札が最も少ないプレイヤーは支払いを免除され、それ以外のプレイヤーは自分の手札枚数と免除されたプレイヤーの手札枚数の差分だけお金を支払うことになります。

決算日カードが規定枚数めくられるとゲーム終了です。

デロンシュのゲームって、どこかスマートじゃない部分があると思っていて、このゲームでも『最初の数手番は手札調整のみ』とか、『決算日カードが規定回数引かれなかったら、山から探して出す』とか、もう少しどうにかならなかったのだろうかと思ったりします。

しかしながら、安い方が競り落とせると言う通常の競りとは逆の発想。でも、安すぎると決算日に資金がショートするし、何なら競りでバッティングすると入札額より2金安く買い叩かれたり(1金でバッティングすると、まさかの1金支払い!!)して自転車操業になるしで、なかなか利益があがりません。

この辺りの入札額の見極めが物を言う部分は何となくデロンシュっぽさを感じています。この人、たまに「ルールは用意したよ!後は上手いことやって!」みたいなとこあるんですよね…

また、決算日が基本的には予告なく突然やってくるので、設備カードが手元に戻ってきた直後に決算日が来て泣くと言う事もあります。「今は決算日来ないで!」みたいに祈りながら案件の山を引くのは楽しいんですが、人によっては理不尽に感じるかもしれません。ただ、決算日が来るかもしれないドキドキ感のおかげで「何としてでも、今回の案件は受注しないといけない!!」と言う緊迫感が生まれるのも事実で、むしろそれが最小が勝つ競りと上手く噛み合っていると思っています。

色々と粗さはありますが、デロンシュならではの一癖あるシステムは一度は遊んでみてもいいんじゃないかなって思います。

余談ですが、僕はデロンシュに魅了されているので、唯一デザイナー名でコレクションをしています。

こんな人におすすめ

競りゲームが好きな人、デロンシュのちょっとディープなゲームを遊びたい人。

ルールの複雑さ:5 out of 10 stars (5.0 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
運の要素:5 out of 10 stars (5.0 / 10)
おすすめ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
自分は好きですけ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)

あんのレビュー

決算日って何だい?仕事をしていない労働者に給料を払うことさ…

手札構築と競りをメインシステムとして、建設契約を落札しお金を儲けるゲームです。
手番では4種ある設備カードを1枚とるか1枚戻すか1枚交換するかのどれかを行い手札を整えていきます。そのあと、各設備の必要枚数が描かれた契約カードを公開し、それに対して一斉入札をします。契約内容を満たす設備カードを手札から出せるプレイヤーは入札でき、最も安い額を提示した(建設契約なので安価な額を提示したプレイヤーが落札するのです!)プレイヤーが落札します。
契約カードの山札には「決算日」カードが一定枚数混ざっており、決算日カードがめくられると手札枚数に応じた金額を銀行に支払わなければなりません。
5枚の決算日カードが処理されたらゲームは終了します。

ゲームシステムでのガードレールが弱く、プレイヤーに相当ゲームバランスを求めるゲームです。
ゲームで勝利しようとすると、手札構築の段階で他のプレイヤーの手札の状況を推察し、それに基づいてより有利に入札を進める必要があります。何となく設備カードを整えることもできてしまいますが、それではなかなか勝負は厳しいでしょう。
契約を落札して設備カードを公開していかないと、決算日での処理で支払いが生じてしまいます。ハンドマネージメントも求められ、プレイ感の軽さに反して真の思考は重めです。
このように厳しいバランスの上に立っているゲームですが、そのようなバランスを積極的に取っていけるプレイヤーならこのゲーム独特のインタラクションを楽しむことができるでしょう。
積み上げた自分の手札が有効に働くかどうかは契約カードのめくり運というところがなんともアンバランスな感じもします。そのような粗削りなところもありますが、ゲーム自体は独特で不思議なプレイ感が残る佳作だと思います。

こんな人におすすめ

絶版小箱のなかの逸品を探している方。またはデロンシュ・フリーク。

ルールの複雑さ:5 out of 10 stars (5.0 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
運の要素:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
おすすめ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
自分は好きですけ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
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