陣取り&バッグビルドが奏でるハーモニー。見た目以上に引き運と読み合いが面白い!(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
2人用ゲームの新しいスタンダードになりうると思う傑作。
ちょっと他のゲームとも比べてみます。
アブストラクトっぽい見た目で取っ付きづらそうだけど、バッグビルドが組み合わさった事で、運の要素が良い塩梅に!
ぼくの感覚だと、デジタルのシミュレーションゲームに近いですね、それもウォーシミュレーションの方です。そこにみんな大好きデッキビルディングのシステムが組み込まれています。世間の評判と異なることを言ってしまいますが、入り口が広く出口が狭い、好き嫌いが分かれるゲームであるように思っています。
ヒゲおすすめ度: | (7.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (8.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (7.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
運:戦略の割合がちょうどいい。傑作2人用ゲーム。
4人ルールはやってないので分かりません!
2018年から2019年にかけて2人用ゲームが結構アツかったように記憶しています。
その中心にいたゲームが『Skulk Hollow』と本作『War Chest』です。まずはほとんど同期のSkulk Hollowの概要と感想を述べてみます。
Skulk Hollowは巨人とキツネの王国に分かれて戦う非対称の2人用ゲームです。
巨人側は(基本的には)非常に強力な1体のコマを、一方キツネ側は弱いながらもたくさんのコマを持っています。勝利条件もそれぞれ異なり、巨人側もキツネ側もヴァリエーションがあって面白い仕組みだと思いました。豪華な木ゴマは一見の価値ありです。
ただ、個人的にはちょっと運要素が多いと感じたのとバランスはあまり良くないと感じました。
出版年は違いますが他に2人用ゲームで評価が高いものでいうと『7WondersDuel』があります。
(執筆時BGGランク18位。すげぇ。)
ちょうど私がボードゲームを始めた頃に発売されていた作品で、今でも大好きです。
変則ロチェスタードラフトによる駆け引きが面白い7 Wonders Duelですが、めくり次第でどうしようもない時もあります。(まぁそうならないように打ちつつもその逆転劇を含めて面白いのですが…)
上記の2作品も面白いんだけどもう少しだけ運の要素が少ない2人用ゲームがないかな~と思っていた私には、War Chestは非常に面白かったです。
袋引きの運要素×陣取りのアブストラクト要素…ということは他のレビュアーが掘り下げてくれると思いますので、ちょっと違った視点から話をしてみます。
War Chestの優れているところは、ゲームシステムの中に「圧縮」がすでに組み込まれていることです。デッキ構築でいうところのデッキ圧縮戦術ですね。War Chestではカードではなく袋《バッグ》の中にいれるコインになるので便宜上「バッグ圧縮」とさせてください。
『ドミニオン』に代表されるデッキ構築ゲームを遊んだことがある方なら、デッキ圧縮の重要性=欲しいものを引く確率を上げるということの重要性はお気づきかと思います。
ゲーム/サプライによってはこれを知っているかがゲームの強さに直結する場合もあるでしょう。
一方、War Chestはゲーム中の3つの要素がそのままバッグ圧縮になります。
1 コインの配置
2 コインの増強
3 コインを攻撃“される”
特に3つ目の「コインを攻撃される」は相手プレイヤーの行動に依存します。
一見すると盤面から1つコインが取り除かれてしまう(そして戻ってこない)ので、不利になるように思えますがこれが効果的にハマると圧縮としても、また盤面的にも非常に強い場合があるのです。
お互いのプレイヤーがこの「相手への攻撃が相手に対して一定のアドバンテージを与える」という点に気が付くとより一層奥深いゲームに感じられるのではないでしょうか?
日本語版もnostalgiaさんから発売されています。
海外版初版での不満点だった占領トークンがコインと同じ円形で見えない問題が解決されています。
グッジョブ!
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
NEZのレビュー
バッグビルドを組み合わせる事で、アブストラクトな陣取りがドラマチックに。
特殊能力を持った駒を使っての陣取りゲームです。一見すると、将棋やチェスのようなアブストラクトゲームのように見えますが、バッグビルドを組み合わせる事で引き運の要素が増えました。
陣取りゲームと言う事で、ボード上に目印された候補地に、先に6カ所拠点を築く事ができたプレイヤーが勝利します。
ゲームでは、毎ラウンド袋から3枚のチップを引き、それを使ってアクションを行っていきます。アクションの種類はチップをボード上に配置する(同じチップは重ねて強化になります。)、チップを表向きに支払ってボード上の同じチップを操作する、チップを裏向きに支払ってチップの購入かイニシアチブ(先手)を取るかです。
この中で特に「ボード上のチップに対して指示を行うためには、同じ種類のチップを手札からプレイする必要がある」と言う仕組みは、上手く機能していて駆け引きを生み出している印象でした。
コマを取り合う陣取りゲームの類では、よく戦線が膠着してしまうケースがあると思います。一度、膠着するとなかなかその先に踏み出す事が出来ないわけですが、手札に同じチップがなければ攻撃されないので、「このまま膠着状態が続けば不利だから、一か八か動いてみよう!!」と言った具合に運を天に任せて、戦況を引き寄せると言ったドラマが生まれます。
捨て牌が表と裏になっている事も、シナジーとなっており、「捨て牌にあのチップが何個か見えているから、おそらく手札にはないだろう。」とか、逆に防御側が裏向きで捨てる事で、相手にこのチップが何枚使用されたかは分からないようにする事が可能です。この辺の駆け引きは非常に面白く感じました。
マップが狭く、拠点を6つも作るのは結構時間がかかりそうと言う印象を持ってゲームを始めましたが、両軍合わせてもチップは最大8つしかボード上に配置されませんし、一度攻撃されて取り除かれると、二度とそのチップは戻ってこないため、だんだんと陣容に綻びが見えるタイミングが出てきて、その隙をついて拠点を作ると言った事が出来たので、30分程度でゲームを終わらせる事ができました。
各ユニットには戦術と呼ばれる特殊能力があり、2マス先を攻撃できたり、移動後攻撃ができたりと個性豊かですし、ユニットの種類も多いので繰り返し遊ぶ事ができるなと思いました。ただ、ユニットの相性はあると思いますので、慣れるまではある程度おススメのセットで遊ぶといいのかなと感じます。ルールではドラフトで使用するユニットを決める事が出来るのですが、これはだいぶこのゲームになれた玄人向けと言う印象です。
将棋やチェスのようなソリッドなイメージの陣取りっぽく見えてしまうため、そういったゲームが苦手な方は見た目で敬遠しがちなゲームだと思いますが、遊んでみると思いのほかバッグビルドによる引き運が大きくて、アブストラクト感はそこまで高くなく、ドラマが生まれやすい構造であるため、2人で駆け引きしながら遊ぶにはとても良いゲームだと感じました。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (8.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
やすやすのレビュー
戦術級シミュレーションゲームの大傑作!!
いつも通り、ゲームシステムや進め方などの基本情報については、他のレビュアーや他ブログなどにお任せするとして、ここでは、やすやす個人の感想などを書いていきますよ~。
冒頭に書いたように、多分にデジタルウォーシミュレーションの要素があると感じるゲームです。著名な作品だと、大戦略とかファミコンウォーズとか、かな。ヘックス上を移動させる・わりと一方的に攻撃する・防御側はわりと一方的にやられる・勝利条件は町を占拠、味方の町で生産、というオールドなタイプです。同種ユニットの連続生産のような物量展開ができない点では、ユニットに固有キャラクターを割り当てるシミュレーションアールピージー(ファイヤーエンブレムなどの)味も感じました。
ウォーチェストでは、システムにデッキビルディング要素が取り入れられています、このゲームの目玉ですね。しかしそもそも自陣営は4種(そして最大4コマ)のユニットしか盤面に存在できないため、デッキビルディングはよくある自軍構築のためではなく、ユニットごとのターン順の制御に主に使われることになります。ターン順は、ウォーシミュレーションゲームにとっては肝となりますが、ここにデッキビルディングを持ってきているので、ポジティブに表現するならドラマチックな展開が起きやすく、ネガティブならば理不尽な敗北に見舞われやすくなっています。
アブストラクトのようになりがちな激しいインタラクションを、デッキビルディング(という神の意思)で制限し制御したゲームなのかな、と感じました。デジタルウォーシミュレーションゲームだと、戦闘時の乱数が行う部分に似ていますね。
コンポーネントが非常にシンプルで、機能美があると言えます。その反面、(難しそうなアブストラクトといった先入観による)見た目上の取っ付きの悪さも際立っており、プレイするまでにちょっとした心理的ハードルがあるかなと思います。ゲーム性も、一手がダイレクトに盤面に響き終盤に向けて激しい消耗戦であるという様相があり、(当然ですが)やはり負け始めると負けやすいことは避けられないので、一度しかプレイしないようなケースの2人戦は、万人にオススメできるわけではないかな、と思う面はありますね。
プレイするたびに予想外の展開が繰り広げられ、毎手番ごとに一喜一憂するため、感想戦も含めてかなり盛り上がりますよ。繰り返しプレイできる環境があるなら、ぜひとも遊んでほしいゲームのひとつです!
ネガティブポイントは、数回プレイすれば気にならなくなります。自陣営のユニット選択にドラフトを取り入れると、遊べば遊ぶほど面白くなっていくゲームになっています。個人的なバリアントルールとして、ある一定条件で「サレンダー」もしくは「優勢勝ち」できるようにすることで、末永く遊べるゲームとして素晴らしいポテンシャルを秘めていると感じました。
ルールの複雑さ: | (5 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8 / 10) |
運の要素: | (7 / 10) |
おすすめ度: | (7 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8 / 10) |