協力型トリックテイキングの金字塔。襲いかかるミッションをクリアして、第9惑星を目指せ!(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
ありそうでなかったトリックテイキング+協力ゲームという組み合わせ。
2020年KDJ受賞作品。
限られたコミュニケーションの中でミッションを達成していくのは、宇宙空間感あるよね!トリテならではの1ゲームの短さもあって、失敗しても何度もリトライしちゃう!
立派な宇宙飛行士になるんだぞ!各ルールにはしっかりシナリオもあって通信機器がトラブルを起こしたりと一箱でずっと遊べちゃう。毎回宇宙飛行士になる前に満足しちゃうけど、トリテ好きとじっくり遊びたい品。
「これは、ひとりのゲーマーにとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」(ヤースヤストロング船長の言葉)
ヒゲおすすめ度: | (5 / 10) |
NEZおすすめ度: | (7 / 10) |
かやおすすめ度: | (8 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (8 / 10) |
Average: | (7 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
ザ・クルーは本当にトリックテイキング初心者向けか否か。
2020年のドイツ年間ゲーム大賞の発表時、誰もが本作『ザ・クルー』の受賞を信じて疑わなかったことでしょう。私が敬愛してやまないフリードマン・フリーゼも同様で、ノミネート作品の発表前にこんなことを書いた上でオマージュ作品である『The Fight:We Gonna Fight Them All』のプリントアンドプレイ版を公開しています。(余談ですが、BGGに挙がっている和訳は私です。いくつかミスを見つけているので直さなきゃ…)
まだオンライン開催ではなかった2年前のエッセンシュピールのスカウトアクション(投票で面白かったゲームを決める催し)でザ・クルーが首位だったことでも話題になりました。私自身トリックテイキングゲームは非常に好きです。ただメインストリームに上がってくるゲームシステムではないと考えていた(そして現在も思っている)のですが、まさかトリックテイキングが天下を獲る日が来るなんて、夢にも思いませんでした。しかも、基本ルール自体は実にオーソドックス。マストフォローで切り札あり。これだけ。ここに協力ゲームという要素を加えたというありそうでなかった組み合わせが天才的ですね。
さて、システム面とかの詳しい部分はいつも通り丸投げして…日本でも流通し始めた頃にTwitterのタイムライン上などで見かけた「ザ・クルーは初心者にもお勧めのトリックテイキングゲームです!」というのはどうかなと思っています。
確かにザ・クルーは非常に面白い&システムはシンプルなゲームでいいと思うのですが、全くのトリックテイキングゲーム初心者がやってもよく分からないままになってしまうと思います。
なぜならこのゲームの面白さは、ある程度マストフォローのトリックテイキングゲームの仕組みが分かっていることが前提で成り立っているからです。ここでいう「分かっている」というのは、ルールとしてのマストフォローを理解しているという意味ではなく、それを踏まえた上での動きができるかどうかを指しています。このカードを出したらどうなるか、というイメージが数手先までできないと悩み所=楽しみ所がつかめないままだと分からないのです。
しかも、協力ゲーム。自分の1手が成功/失敗に直結することになります。
ここから先はメンツ次第ですが、「ここはこうするべきだった」「今のは違う」「なんでそっちを出したんだ」という話が出れば、もうその初心者の方はトリックテイキングゲーム自体が嫌いになっちゃう可能性を大いに含んでいるというのは気を付けなければいけないと思います。逆に失敗した時にどうすればよかったのかという検討から、気づきを誘導してあげるといいと思いますが、これもなかなか難しい…誰しもが感想戦をしたいわけではないですからね。
ネガティブなレビューに聞こえるかもしれませんが、ゲーム自体はとてもいいゲームです。
だからといってそれがそのまま『初心者向け』ではないでしょう、というのが私の意見です。
ルールの複雑さ: | (5 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7 / 10) |
運の要素: | (7 / 10) |
おすすめ度: | (5 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6 / 10) |
NEZのレビュー
限られたコミュニケーションは宇宙空間での通信の雰囲気たっぷり。如何に情報を伝える事が出来るかがミッション達成のカギ!
第9惑星への宇宙の旅をテーマにしたトリックテイキングゲームです。
何と言っても特徴的なのは協力ゲームであると言う所ですね。第9惑星への旅は50のミッションで構成されており、それぞれのミッションにはストーリーが決められています。旅路の中で襲い掛かる難題がミッションとしてプレイヤー達に与えられる感じですね。で、プレイヤーは協力してそのミッションをクリアして、ストーリーを進めていきます。
トリックテイキングのルールは、シンプルなマストフォロー切り札ありとなっています。
ミッションの多くは「プレイヤーごとに指定されたカードを含むトリックを獲得する」事が条件となります。例えば、「Aさんは「緑の4」を含むトリックを取る」みたいな感じですね。最初のうちは、獲得するカードの必要数も少ないですが、ミッションが進むに連れて必要数が増えたり、獲得する順番が決まっていたりと難易度が上がっていきます。ミッションの中には「リーダーは他のプレイヤーに元気か聞いて、病気のプレイヤーを1人決める。そのプレイヤーはトリックを獲得できない。」なんて言う変わり種も出てきます(思わず、「元気ですかー!!」って聞きたくなります)。
さらにこのゲームを難しくしているのがコミュニケーションの制限です。ゲーム中は、プレイヤー同士はコミュニケーションを取ってはいけない事になっています。そして、通常のコミュニケーションに代わって与えられてるのが「通信トークン」です。通信トークンは手札を1枚公開しつつ、そこに配置する事でそのカードが自分の手札の中で、どういうカードなのかを表現します。
これをミッションの中で各自1回ずつ使用する事ができ、これが唯一のコミュニケーション手段となります。どのタイミングでどういうヒントを出すのかがとても難しいですが、それだけに意図が通じたときは思わず「そうそう!そう言うことなんですよ!」ってなります(もちろん、ミッションによっては通信が出来ない場合もあります)。この辺りはトリックテイキングに慣れたプレイヤー向きなのかなと感じます。
ミッションが50もあるので、全てのミッションを通して行うにはかなりの時間を要すると思います。ですので、通しでやるのであれば、何回かに分けて行う必要がありそうです。そうでなくても、途中までミッションを遊ぶだけでも、このゲームの面白さは充分体験できると思います。
ミッションに失敗すると思わず「もう一回!」と言いたくなってしまいますね。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
かやのレビュー
ベスト人数は3人くらい、4人なら慎重に、5人なら大胆に攻めるべし
私もトリックテイキング(以下、トリテ)は好きで、このゲームは所有しているのですが協力ゲームというのもあって好き嫌いが分かれるゲームだと思います。
一回とてもトリテが得意なメンバーでやったのですが、
「もうわかるよね?」と圧をかけられつつカードを出されると
「・・・・まだわかんなんだけどぉ・・・」(心の声)
と委縮してしまう、それが協力ゲームです。
こんなこと書いてますけど、協力ゲーム自体は私は大好き、ちょっと失敗しても「もう一回やろう、ここでこうすればできたかも!」、「こういう時はどうしたらよかったの?」とか、「この手札ひどかった~」とか楽しく振り返りつつ失敗するほど、ミッションを達成したとき、うまく通信できたときすごく楽しいんですよね。
個人的には、3人くらいが手札も調整しやすくプレイしやすいです。4人もそこそこ、5人だと手札運が強く出る印象です。
ミッション(トリック)を取ってはいけないのに、手札に切り札カードが2枚もあったら・・・通信は切り札カードを持っていることは伝達できないので慎重になって回り道をしているうちに、切り札が残ってミッションがクリアできないなんてこともよくわります。
ま、それでもクリアできた時には楽しいので、「失敗してもOK!」というトリテ好きが集まれって「ザ・クルー」を遊べば楽しいことまちがいなしです。
ミッションは50までありますが、1つひとつのミッションは短いので時間調整にも!
個人的には無難にミッションをクリアするよりも何度か失敗してやっと1ミッションできた~~~!というほうが楽しいです。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (8.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
やすやすのレビュー
トリックテイキングの綱渡りを、協力ゲームで体験させることで昇華させたメルクマール。
2019年、ザ・クルーは大きな足跡を残しました。KDJという賞を獲ることにより、それまで日の目を見なかった(筆者の感想)トリックテイキングが、突如として脚光を浴びたのです。ここに至るまでの道程には、きっとさまざまな議論があったことでしょうが、結果としてぼくは素晴らしい出来事だったと思っています。
さて。
トリックテイキングが日の目を見ない理由のひとつに、「トリックテイキングに慣れないとトリックテイキングは楽しくない」という、何だかものすごいジレンマがあります。もうこれは、「お金がないとお金は稼げない」というくらい、持たざる者にとっては理不尽で厳しい現実です。スポーツにも似た、体育会系のノリです。
ですが。
ザ・クルーは、その社会の不条理のような強者の理論を、協力ゲームという切り口で再構築したことで、視点が、いや宇宙的に言うなら次元が変わりました。経験と計算と勝負強さで他者と場をコントロールする楽しみから、経験や計算力を育てシェアする過程を楽しむ、へと目的が変わったように思うのです。言うなれば、プレーヤー育成を楽しむトライ&エラーゲームへと(魂はそのままに)大変貌したのです。
特に、ザ・クルーは1ゲームが短時間です。リトライが容易なので、他の協力ゲームよりハードルは低いですよ~。
大前提として、協力ゲームを楽しめる人間関係でプレイすることはもちろん必要です。ミスを責めたり、失敗を引きずったり、個人の判断を否定するような相手とは、このゲームに限らず協力ゲームを一緒に遊ぶべきではありません。そういった真剣での決闘を望む相手とは、それに適したゲームがありますよね。
協力型のトリックテイキングゲームは、過去にもあったようです。しかしここに来てザ・クルーが評価されたのは、メーカーさんやデザイナーさん、業界の努力の賜物であり、それを支える消費者たちの力が時世にぴったり合致したに違いありません。
ボードゲーム史に疎いので大きなことは言えませんが、少なくとも自分ボードゲーム史上には、燦然と輝くマイルストーンとして刻まれたことに違いはありません。
ルールの複雑さ: | (4 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8 / 10) |
運の要素: | (7 / 10) |
おすすめ度: | (8 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8 / 10) |