シャーロックホームズ10の怪事件 / Sherlock Holmes Criminal-Cabinet

レビュー記事
この記事は約10分で読めます。

デザイナー: Gary Grady, Raymond Edwards, Suzanne Goldberg
アートワーク:Bernard Bittler
, Arnaud Demaegd, Nils Gulliksson, Pascal Quidault,Neriac, Stefan Thulin
出版社KOSMOS, Chessex, 二見書房
参照
Boardgame Geek

謎解きゲームの源流を辿る。ドイツ年間ゲーム大賞受賞作、唯一のゲームブック。(ヒゲ)

ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値

ヒゲ
ヒゲ

ヒゲのソロレビューになります。
ドイツ年間ゲーム大賞の中で唯一の
謎解きの要素を含んだゲームの源流を辿る旅。

ヒゲおすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)

ヒゲのレビュー

名前は聞いたことあるけれど、やったことない人が多そうなSDJ受賞作。
この記事を読んで興味が湧いたら是非買ってみてください。

2022年10月、Twitter上で一瞬だけ話題になった『シャーロックホームズ10の怪事件』のレビューです。

二見書房からシャーロックホームズの謎解きの本が出るというアナウンスがあり、コアなボードゲーマーがこぞって「10の怪事件のリメイクか」と色めきだちました

結果的に、今度発売されるものは別の論理パズル系のものだと分かりました。

しかし、10の怪事件への関心の高さ、一度はやってみたいというプレイヤーが一定数いることが分かりました

話題になったのはこちら。論理パズルのゲームブックという趣。本レビューの『シャーロックホームズ10の怪事件』とは別。

とはいえ、どんなゲームか良く分からないと思うので、プレイ済みの私がどんなゲームかご紹介していこうと思います。
ネタバレのないように書きますが、完全初見でやりたい方はこれ以降は読まない方がいいでしょう。というわけでいつもなら最後に出すどんな方におすすめかと私の評価を先に書いておきます。

こんな人におすすめ

謎解きゲームが好きな方。シャーロキアンの方。
あるいは、ベイカーストリートイレギュラーの少年たち。

ルールの複雑さ:3 out of 10 stars (3.0 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:0 out of 10 stars (0.0 / 10)
運の要素:0 out of 10 stars (0.0 / 10)
おすすめ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
自分は好きですけ度:7 out of 10 stars (7.0 / 10)

入手方法と注意点

まずは手に入れないことには話は進みません。なにせもう30年以上前の商品です。さすがに新品は見つからず中古品になると思います。


購入の際の注意点入手方法をご紹介します。

まずはこの本には付録にあたるものがついています。
この付録がすべて揃っていないと謎が解けません。
購入の際にはかならず4点の付録がついていることを確認しましょう。
欠品があっても大丈夫なものを強いて言えば『捜査の情報源』はなくてもなんとかなります。
事件に入る前のルール説明部分および本文16ページに書いてあるメモやスクショで対応可能です。
しかし、その他の『住所録』、『地図』、『ロンドンタイムズ紙』はないと進行不可です。

一番手前が捜査の情報源。

次に入手方法です。
2022年11月現在、意外とAmazonでも売っています。
あとは発想を変えて、これはゲームではなくて本だと認識すると古本屋さんに売っています。
通販で有名ところでいうと日本の古本屋というサイトで買えます。在庫も豊富な印象。

1985年当時の価格は1,900円、この記事の執筆2022年11月現在で完品4,000円ほどで購入可能です。
10の怪事件なので、4,000円で買ったとして1事件400円。安い!
実際かなりコスパはいいと感じました

ゲームの特徴と解き方

基本情報として、だいたいどの事件も2時間程度。
プレイ人数…という言い方でいいのかは分かりませんが1人です。

ただ私は各自が本を購入してオンラインで通話しながら3人でプレイしました。
この遊び方、オススメです。
各自が同時に別のことを調べたりして情報共有していくのが面白かったです。
あと1人でやってるとモチベーション続かなくなることもあると思います。
みんなで完走するぞ!…という気持ちになれます

次にゲームの特徴です。
このゲームはゲームブックの形式を取っています。
よくあるゲームブックでは「モンスターが襲ってきました。戦うなら〇〇ページへ。逃げるなら××ページへ。」みたいに別のページを読むものが一般的かと思います。

シャーロックホームズ10の怪事件ではどうなっているかというと、先ほどの付録を使用します

例えば、被害者の名前を『住所録』で調べると家の住所が分かります。
その住所での聞き込み内容が本の該当箇所に書かれているという感じです。

例えばホームズの住所を調べてみるとこうなります。ゲーム内の地図上でNorth Westの42の建物に住んでいることが分かります。 ベイカー街221-Bとかの詳細な住所ではないわけです。あとは名字で検索することに注意しましょう。

全シナリオプレイして一番参照した付録はやはり『住所録』、ついで『ロンドンタイムズ紙』、アリバイなどの情報を探る決め手になる『地図』という感じでした。

タイム紙は実際の新聞のようにアルバイト募集から意見広告まで多種多様な情報が載っています。 一見関係なさそうなところが事件に関係していたりもします。

これらの情報や聞き込みの内容から推理して、各事件の後ろに書かれている質問事項に答えるというのがゲームの目的になります。

一応、得点を出すこともできホームズと競いましょうと書かれていますが、これは気にせずにやった方がいいと思います。

ありとあらゆるところに聞き込みに行って推理する我々凡人に対して、ホームズは2,3箇所の手がかりだけで事件を解決してしまっているので、だいたいロースコアになってしまいます。


このゲームの楽しいポイントはスコアアタックではなくて、推理そのものです。
物語を堪能する意味でも出来るだけたくさんのところに聞き込みに回って、推理に納得いくまで考えるといいでしょう。
実際、各事件ですべての場所を回ればさすがに犯人や動機を外すことはありません。
こういう推理系のゲームで納得感って大事ですからね。

質問事項に答えたら、解決編を読みます。
ホームズの推理を読んで自分の推理がどこまで詳細に当たっていたかを検証してみましょう。
ちゃんと調べていれば、かなり詳細に当てることができます。しかし、簡単というわけではない非常に論理的で納得できる類の謎だということです。

オススメの事件

順番に解いていけばいいとは思いますが、オススメ・特に面白かった事件を2本ご紹介します。
事件④<象と城>劇場の死体
事件⑤ミイラの呪い

それぞれオススメしたいポイントを紹介していきます。

事件④<象と城>劇場の死体

プレイ時間はおよそ3時間。収録されている中でも長い部類になります。
この事件は先ほどの付録をフル活用するので非常にやりごたえがあります
またこれまでの事件はすべての質問事項に回答できてきたのですが、1つだけ分からなかった謎解きがありました。それが導入部分に書かれた謎の暗号です。
3人でやっていたので情報を集める係と暗号係に分かれました。英語ができるので私は暗号係。
途中まではわかったのですが、差出人だけが分かりませんでした。

この暗号に非常に悩むと思いますが、1つだけアドバイスを。
この暗号はこの暗号に書かれている情報だけで解けます。
解決編にあたる部分を読んで「なるほど!そういうことだったのか!」と膝を打ちました。
2重、3重に暗号が重ねてあるので、色んな視点で考えてみてください。

事件⑤ミイラの呪い

プレイ時間がおそよ1時間。
収録されている中で最も短い事件です。難易度がもっとも低いでしょう。
事件の説明がされる導入部分も他の事件が3ページほどの長さなのに対して、この事件は1ページしかありません。しかもこの導入部分にはほとんど何も手掛かりがありません。被害者の名前もなければ、そもそも何が起きたのかも正確には書いていないのです。噂話のようなものがあるということだけしか分からない、そんな導入部分です。
やっぱりここでも付録の出番です。
少しずつ情報が明らかになっていく楽しみがありつつも、サクっと終わる(簡単すぎる気もする…)のでオススメです。

ボードゲームにおける謎解きの潮流

ここまでで作品の魅力については伝わったのではないかと思います。

ちょっと視点を変えて、ボードゲームと謎解きの潮流について簡単に触れてみようと思います。

1985年に『シャーロックホームズ10の怪事件』がドイツ年間ゲーム大賞を受賞します。

謎解きや論理パズル系のゲームでいえば、もう少し歴史を遡って1967年の『スルース』(シド・サクソン作)あたりがあるでしょうか。

そういえばホームズみたいな人がパッケージにいた。

ではその後、謎解きのゲームというとどういったものがあるでしょう。
私はまだボードゲーム始めて8年目とかなのですが、このゲーム歴の中でも謎解きのブームは一度ありました。それが2017年頃です。

タイムリープを駆使して謎を解いていく『T.I.M.E Stories』(日本語版は2017年発売)

基本シナリオの出来の良さに感服。 拡張は当たりはずれある印象。

アプリと連動してゲームを進行していく『アンロック!』(こちらも日本語版は2017年発売。)

1時間くらいでサックリ終わって好き。

そして2017年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門受賞の『EXIT』

シリーズが進んでいくとコンポーネント破壊したりするゲーム。

そうそう。忘れちゃいけないのは『ワトソン&ホームズ』(これまた日本語版は2017年発売)もありましたね。

半分くらいはプレイ済み。ちょっと推理の納得感が薄い…

2017年は本格的にボードゲームにハマり始めて自分でもたくさん買い始めた頃で、ちょうど流行っていたのがこの辺りの謎解きゲームだったので思い出深いですね。

その後、いったんブームは落ち着きますが謎解きの流れというのは継承されていきます。
2021年ドイツ年間ゲーム大賞は『ミクロマクロクライムシティ』でした。

実は結構好き。

もちろん言い始めれば他にもたくさんの謎解き要素のあるゲームは出版されてきました。
上に挙げたものはだいたいやってきたのですが、『シャーロックホームズ10の怪事件』はその中でもかなり特殊な体験だったと思います。

自分が知らないこともすぐに検索ができる現代人の目から見ると地図や住所録を調べるというアナログで面倒な動作が「ゲーム体験として楽しい」わけです。
この点は大きな地図の中から探すというアナログ感が見所のミクロマクロクライムシティと通じるところがあるかもしれません。

かなり昔のゲームです。
文章の中には今の感覚とは違う習慣や考え方もあり手放しに楽しめる人ばかりでもないと思います。
しかし、このゲームの持つ特異性は未プレイのままじゃ勿体ないと思います。

インターネット通販で簡単に買えるうちに是非プレイしてみてください。
ポチっと買うだけなんて…

「初歩的なことだよ、ワトソン君!」

タイトルとURLをコピーしました