石材を船に乗せて建築現場へ輸送しよう。目指せ!偉大なる建築家イムホテップ!(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
ちょうどいい感じのゲームをコンスタントに作るハーディングの中量級ゲーム。
他の作品に比べると剥き出しのインタラクションがアツい印象。
フィル・ウォーカー=ハーディングは1時間級のファミリーゲーム作らせたらホント上手い!船に石を乗せるか船を出航させるかの2択が強烈に悩ましい!
メカニズム・ウェイト・フレーバーの3拍子が揃った優等生だと思います。ボードゲーム初心者さんを沼に引きずり込むための、キラータイトルとして挙げたい作品です。
ヒゲおすすめ度: | (6.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (6.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (6.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
シンプルなシステムで濃厚なインタラクションを堪能できる作品。
フィル・ウォーカー・ハーディングの有名な作品と言えば、考古学カードゲーム(2007)、スシ・ゴー(2013)、カカオ(2015)、クマ牧場(2017)、ギズモ(2018)あたりでしょうか。
いざ作品を並べてみると、システム面での共通点はあんまり感じないデザイナーです。
ただどれも“中量級くらいでいい具合のゲーム”というのは言えますね。注目のデザイナーの1人であることは間違いないでしょう。
そんなハーディングの中で私が一番好きなゲームを挙げろと言われれば、本作『イムホテップ』になります。他のハーディングの作品に比べるとテーマやシステムがハードな印象です。
手番でやることは①石材を船に乗せるか、②船を出航させるかのどちらかになります。シンプル!
船を出航させる場所はいくつかあり、それぞれの場所でルールに従って配置/得点という感じ。
このゲームの面白いところは、ほぼ公開情報でアブストラクト味の強い読み合いにあると思います。システムに違いこそあれど、クマ牧場も同じような読み合いが必要ですね。
BGGベスト人数は4人となっていますが、個人的には2人もいいと思います。(それならイムホテップデュエルもあるが…)
こってり読み合いましょう。ノスタルジアで販売されているアップグレードキット、いいなぁ…
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
NEZのレビュー
中量級の名手ハーディングが贈る、プレイヤーの思惑むき出しの建築ゲーム
中量級ゲームデザインの雄、フィル・ウォーカー=ハーディング氏による名作建築ゲームです。
古代エジプトを舞台に石切場から石材を運んで、船で建築現場へ送って建物を建てると言うテーマです。建築現場にはピラミッド、神殿、オベリスクなど得点方式が異なるエリアに分かれていて、そこに船で石材を送り込む事で得点を獲得していくゲームになります。
プレイヤーが手番に出来ることは大きく分けて2つ。「手元の石材を船に乗せる」か「船を出港させて、建築現場に送る」のどちらかです。
ゲームでは、毎ラウンド、積載数が異なる船が複数提示され、プレイヤーは手持ちの石材の1つをそれらの船のどこかに置く事ができます。この時、石材を船のどの位置に配置するかで建築現場での得点が変わります。ただ、船に石材を置いた事によってどこの建築現場で何点入るのかは明らかになってしまいます。船を動かすのはアクションの1つなので、自分がその船を移動できれば良いのですが、そうでない場合は全然他の場所に動かされてしまう可能性があります。これは熱い。
船の行先は複数の建築現場のうち1カ所で、各建築現場には1艘の船しか到着できません。そして、船が到着すると、積まれた石材が先頭から順番に建築現場に置かれていきます。各建築現場にはそれぞれ異なる得点方法があり、ピラミッドなら配置した位置によって即座に得点、オベリスクならゲーム終了時に最もオベリスクに石材を積んだプレイヤーが得点、石室なら3xNの広さに石材を敷き詰めていって、各プレイヤーの石材で作られたエリアの広さによってゲーム終了時に得点と言った具合です。なお、様々な特殊効果のあるカードを獲得できる市場などもあり、手番にカードに特殊アクションを行ったり特殊勝利点を得る事もできます。
さらに手元に置ける石材は限りがあり、少なくなると採石場から石材を切り出してくる必要があるのですが、これも手番に取れるアクションの1つですので、どのタイミングで石材の補充をするのかも重要な駆け引きになってきます。「もうすぐラウンドが終わるから、次のラウンドを有利に進めるために、あの船の移動を諦めて、ここは石材を確保しておこう。」と言った感じですね。
石材を置く、もしくは船を動かす事がメインになっているシンプルなゲームであるにも関わらず、相手がどこに船を送りたいのかある程度分かってしまう事で、むき出しになったバチバチ感がとても面白いゲームです。石材も木製の大き目キューブでラウンドが進むに連れて盤面が賑やかになってくる感じは個人的には非常にワクワクしました。プレイ時間も1時間程度で濃密なインタラクションが味わえると言う事で、プレイヤー間での駆け引きが好きなプレイヤーには一度遊んでみてほしいゲームです。
余談ですが、イムホテップは元々古代エジプトの宰相で、エジプト最初のピラミッドとされているジェセル王の階段ピラミッドの建築に関わった人物だそうです。そして、その功績を讃えられたからか、後にエジプト神話の医療の神として列席されました。王様のためにピラミッドを進言したら、なんと自分が神様になってしまったのですね。
お後がよろしいようで。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
やすやすのレビュー
古代エジプト、巨大建造物の建築、あぁ、ロマンの塊。
今回はぼくの好きなこのイムホテプを肴に、ボードゲーム初心者(もしくはボードゲーム下手っぴなぼく)にとっては、一般的にどんなゲームが導入に合いそうなのかのサックリ考をしてみたいと思います。
つーわけで早速ですが、まずはぼくが思う初心者像リスト(つまり自分という人間の解析結果)を以下に書きました~。
これ、基本的にぼくのことなんですけど、書いていて何か暗澹たる気持ちになってきました…よくこの現代社会で生きて残れてるな、自分…。
まぁ、気を取り直して。
これらの要素って、要するに「そのゲームの本質を理解していない」ということに結び付きます。「何をしたらどうなってその後はどうしたらいいんだろう」ということが分からず、「勝敗はすべて地頭の良さかゲームの経験値で決まる」と思ってる(もしくは思いたい)んですね。しかしボードゲームの現実はご存知のように、強い者だけが勝つ、という単純な世界ではありません(なるべくそれだけにならないようにデザインされているゲームが多い)。
たしかに要素が多く展開が複雑で、そのゲームを楽しみ勝負するためには、かなりの知的生命体であることを要求されるゲームも存在します。ミスマッチの偶然から、そんな殺伐としたゲーム世界に初心者が迷い込んでしまうこともあるでしょう。しかしそれは不幸な事故であり、潜在的なボードゲーマーが失われる由々しき事態となってしまいます、それは避けましょう、避けて欲しいのです(ぼくのためにも)。
では、そういう災害を引き起こさないためにも、どんなゲームが初心者にとって良さそうなのかを、ぼく目線で考えます。先に挙げた初心者像リストを逆転させてみました。
こんな感じでしょうか。伝統的なボードゲームや遊びなんかは、むしろアブストラクトであることが多く、初心者はむしろそちらに親しみがあるように思います。なので、因果関係を薄める・運要素を高める・インタラクションを下げる、といったガードレール的なものが、初心者やぼくにとっては製作者が思うほどしっくりきていないケースもあるのかなと思うわけです。
そんなぼくの意見のポイントをまとめると、次のような2点になります。
「運要素が高いことは、初心者に必ずしも良いというわけではないかも。インタラクションが強いってことも、初心者に不向きという意味ではないかもよ。」
運要素が高いゲームは、ふつうプレイ中に運要素を減らすことができるので、その方法に早めに気が付ける人が楽しめそうです。そして初心者にとって負けることは想定内なのでそこはあまり問題ではなく、その過程や敗因の分かりやすさが、面白さの実感となるような気はしてるんですよね。
というところで、このイムホテプ。アブストラクト風の(ほぼ)情報公開ゲームです。上で列記した条件はかなり満たしていて、初心者が勝っても負けても納得でき、ゲーム中のジレンマを目に見える分かりやすい形でガッツリ楽しめる作品となっています。
ゲーマー同士の誇りを賭けた一戦には向かないかもしれませんが、初心者に「ボードゲームの魅力」みたいなものを感じさせるには、かなり適したゲームだとぼくなんかは思うわけです。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |