名作ダイスゲーム『ヘックメック』のカードゲーム版。元のゲームの印象は残しつつも、システム的に別の口での大胆アレンジ。(ヒゲ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
クニツィアジレンマVer2.0とでもいうべき今までとは違うでもクニツィアらしいジレンマ。
競りゲームとしてもシンプルでいい感じ。やっぱクニツィアはすげぇわ。
競りなんだけど、インタラクションがある変わり種。飲み込みづらいルールの先にあるジレンマの大波に溺れたい。
ダイスゲームであるヘックメックのスピンオフ作品。オリジナルから運の要素が減り、戦略性がぐっと増しました。
ヒゲおすすめ度: | (7 / 10) |
NEZおすすめ度: | (7 / 10) |
あんおすすめ度: | (7 / 10) |
Average: | (7 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
競りゲームの敷居を下げつつ、クニツィアのアレンジ力を味わわせてくれる名作。
近年(2022年執筆)のクニツィアは、ゲームのシステムの載せ替えが上手な気がします。
2019年に『ラマ』でスマッシュヒットを繰り出したかと思えば翌年である2020年には『ラマダイス』を出版。「おいおいラマをどうやってダイスゲームにするんだ!?」…と発表当初は思っていましたが、システムをごっそり替えつつも『ラマ』の持っていた面白さのエッセンスとテイストは残っているというところにクニツィアの凄みを感じていました。本サイトでもレビュー済みです。
『ヘックメックカードゲーム』の元となった『ヘックメック』は2005年発売のゲーム。まとめてダイスを振って、そこから1種類の出目を全て取る→また振るか出ている出目の合計値のタイルを取るかの選択を迫られるというシステムでした。(詳細は割愛)
『ヘックメック』からダイスを抜くってどうなるんだと思ったのですが、ここを大胆にアレンジしてきたのが本作『ヘックメックカードゲーム』です。
まずはシステムを競りにしたことです。ここは大胆なアレンジながらもよく効いています。
『ヘックメックカードゲーム』では人数分並んでいる得点タイル(ドミノ牌みたいなやつ)を取るために、カードを出していきます。得点の高いタイルを取るためにはラウンド終了時に出しているカードの値が大きい、かつ1枚以上のイモムシカードを出している必要があります。
あるいはイモムシカードを出さずにラウンドから抜けることで、即座に一番低い得点タイルを取ることもできます。しかも早いタイミングなら手札補充も行え、以降のラウンドで優位に立つことができます。もう1つ利点があり、自分の高得点タイルを他人に奪われる前に早抜けで蓋をすることができます。(詳細は割愛)
ここにたくさんのジレンマが含まれています。
また競り残るコストと早めの撤退での恩恵のバランスがちょうどいいのが流石クニツィア。
弱点を克服しているのもGood。
元の『ヘックメック』が抱えていた問題点としてダウンタイムがありました。
1人のプレイヤーがダイス振って出目を確定させるまでの間は基本的にやることがないので人数が多いと結構ダウンタイムがありました。まぁ他の人がダイス振ってるのを見てるだけでも楽しいってところはありますが。
『ヘックメックカードゲーム』は1人の手番はカードを1種類出すだけなので、サクサク回ります。ダウンタイムは短ければ短い方がいいと思うので、非常にいい変更だと思いました。
得点タイルのイモムシの数がパッと見ではかなり分かりづらいという些細な欠点はありますが、ライトな競りゲームかつシステム同士が噛み合った新しいクニツィアジレンマを体感してみてください。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (7.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
NEZのレビュー
ルールが若干分かりにくい部分はあるが、毎ラウンド押し寄せるジレンマの大波を乗り越える面白さが秀逸。
イモムシを食べたい鳥達をテーマにしたヘックメックのカードゲームバージョンです。本家ヘックメックは発売されたのがBGGによると2005年と言う事なので、だいぶお久しぶりな感じがします。
ちなみに私は本家ヘックメックは未プレイですので、そことの比較はできません(きっと、ヒゲさんがそこら辺は解説してくれるでしょう)。
このゲームでは、ラウンド毎に人数分公開されるイモムシタイルを取り合う競りがメインのゲームです。手番には手札から1~5とイモムシカードのどれか一種類を好きな枚数プレイし、カードを1枚引きます。なお、カードは1ラウンド中に同じ種類のカードを2回出すことはできないため、必然的に1ラウンドでは最大6回手番が回ってくることになります。
タイルの獲得については2通りの方法があり、イモムシカードをプレイしたか否かでそのプレイヤーがどちらの方法で獲得するのかが決まります。
イモムシタイルは、上半分にタイルの価値、下半分に得点が書かれています。もちろん、価値の数字が高い方が得点は高くなります。そして、タイルの中には得点も価値も0と言う特殊なタイルが数枚含まれています。
なぜ、価値のない特殊なタイルが含まれているかと言うと、実はこのゲーム、条件を揃える事で相手の獲得したタイルを奪う事ができるからです。プレイヤーは獲得したタイルを山のように積み上げていくのですが、他のプレイヤーはプレイしたカードの数字の合計が、他のプレイヤーの山札の一番上のタイルの価値とピッタリ一致した状態で競りから降りる事で、タイルを奪う事ができます。これを阻止するために、イモムシカードをわざとプレイせず、あえて価値の低いカードで蓋をしてしまおうと言う事ですね。
全体を通して軽いプレイ感ながら、相手の動向を鑑みつつ、毎手番このラウンドでどこまで突っ張るのかを考えるのが非常に面白かったです。特に相手のカードの出し方によって、「もしかして、うちのタイル狙われてる?」と疑心暗鬼になると、よりどのタイミングで降りるべきか悩んでしまいますね。
ルールの複雑さ: | (6.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
あんのレビュー
n番目のヘックメック。ただし最もゲーマー向けのヘックメック。
ヘックメックは、1 から 5+虫の目を持つ 6 面ダイス 8個を使って、得点となるタイルを取り合うゲームです。
ヘックメックカードは、ヘックメックと同様のタイル、そして 1 から 5、虫の 6 種のカードをコンポーネントとし、ダイスを無くしてカードゲーム化しています。
ゲームシステムは競り。ラウンドごとに公開されるプレイヤー人数分のタイルを、出した手札の合計値で競っていきます。手番では 1 種類のカードを任意枚数出しますが、以降同種のカードは出すことができなくなります。
手札の補充は、手札を出した後で1枚補充。そのため、カードを複数枚出して競り上げていくと次第に自分の手札のカードが減っていきます。また、競りから降りると手札を2枚補充できますが、最後に競りから降りたプレイヤーには手札の補充がありません。場に出されたカードはラウンド終了時にすべて捨て札になるため、手札枚数をいかにコントロールするかが非常に重要になります。
作者のR・クニツィアは多作であるとともに、過去の自身のゲームシステムを何度も新たなゲームで使用することで知られています。
ヘックメックカードでも、ゲームシステムにおいて既視感のある部分がいくつかあります。
手札1種類なら何枚でも出せる・任意の枚数の手札を出しても補充は1枚(万里の長城、長蛇の列)。競りから降りるタイミングで手札補充枚数が異なる・最後に降りると補充枚数が最低(タージマハル)。
また、いわゆる洗面器ゲームといわれる我慢比べのプレイ感は、「アタック」や「空手トマト」に通じるものがあります。
ヘックメックカードでは、競りの相場観のわかりやすさ、出せるカードの幅広さが独自の魅力になっています。カードの補充も適度にあるため、洗面器ゲームの苦しさがありながら、カツカツではないところもプレイのしやすさにつながっています。
ダイス版であるヘックメックは 15 年以上前の作品です。当時はダイスゲームの定番であり、頻繁にプレイされていましたが、最近はプレイされる機会も減っています。
実際、カード版をプレイした人からも「ダイス版は、名前は知っているがプレイしたことが無い」という声をいくつか聞きました。
是非、これを機会にダイス版のヘックメック(拡張もあります!)、また、上にあげたゲームをプレイしてゲームの広がりを感じて欲しいと思います。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |