ヴァリアブル・フェーズ・オーダーを制して、アメリカ全土に事業を展開!相手との読み合いが熱い重量級ゲーム(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
ヴァリアブル・フェーズ・オーダーを軸に据えた会社経営ゲーム。状況を的確に把握して、先手を打つのがたまらない!
事業を発展させて寄付して名誉を得たカーネギーをテーマにした作品。寄付をすることでより多くの勝利点を得られる、奥深いです。
フレーバーとシステムの一体感を求めると心が無になるけど、一周して「それが良い」と感じられた悟り重ゲー。ただし「現代風」なネットワーク構築ゲームに見えて、バチバチです。
NEZおすすめ度: | (8.0 / 10) |
かやおすすめ度: | (7.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (7.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
NEZのレビュー
そうですね。次のイベントに向けて、良い準備をしていきたいですね。
アメリカの実業家アンドリュー・カーネギーをモチーフとした、会社発展ゲームです。慈善活動家としても知られるそうで、ゲーム中も慈善団体への寄付が重要な要素として設定されています。
ゲームのシステムとしてはヴァリアブル・フェーズ・オーダー(プエルトリコなどで採用されたスタートプレイヤーがアクションを選択して全員がそれに従うシステムです)が採用されています。また、ゲーム開始時点でタイムラインと呼ばれる、今回のゲームで発生するイベントの一覧が提示されており、それが各アクションに紐付いています。例えば、「人事」アクションを選ぶと「南部での収入」イベントが発生すると言った具合です。
タイムラインで発生するイベントには「収入」と「寄付」があり、「寄付」はお金を支払う事でゲーム終了時の特殊勝利点を獲得します。もちろん、寄付できる場所は早取りです。
そして、「収入」は東部・西部・中西部・南部と区分けされた各地域の中で指定された場所から、お金や商品などの資源を獲得できます。
この収入が曲者で、収入を得るためには事前にその地域に自分の会社の社員を派遣しておく必要があります(そして、収入と一緒に社員はロビーに戻ってきます)。このゲームでは収入を得る事が出来るタイミングは主にこのイベントになりますので、これを獲得できないのはかなりの痛手です。となると、イベントが発生しそうな地域には事前に社員を派遣しておきたいところなのですが、派遣はアクションのコストなので、事前に派遣を伴うアクションを実行しておいて、社員をその地域に派遣しておかないといけません。考え方としては下のような感じです。
こんな感じで常に先手を見極めていくのが、このゲームの最大の特徴だと思います。プエルトリコなどのアクション選択ボーナスなどはないのですが、この相手の行動を読み切って収入の相乗りをするのがとても面白く、逆に予想していないアクションを選ばれた時は「うわー!そっちかー!!」と声を挙げてしまいます。
また、選択できるアクションは「人事」「管理」「建設」「研究開発」の4つしかないのですが、個人ボード上の部署とそこに配置された社員の数によって、プレイヤーごとに出来る事が少しずつ変わっていくのも、とても面白いです。あくまで各アクションは出来る事の指針がであり、実際のアクションの内容は個人ボード上の部署によって変わり、実行できる回数がそこに配置された社員の数になります。
各部署に人員がどれだけ配置されているかは、そのプレイヤーがどれだけそのアクションを実行したいかにも直結してくるため、各プレイヤーの個人ボードの状況を確認する事で、そのプレイヤーがどのアクションを実行したいかを予想しやすくしています。
インタラクションについては、特に「建設」アクションで強く表れます。アメリカ大陸の各都市にトークンを置いていく事で大都市間のネットワーク構築を目指すのですが、当然このトークンの配置も早取りで、場合によっては全員が到達できない都市もあるので、以下に素早くルートを構築していくかの争いがバチバチしています。
ともなれば、ガンガン建設していきたいのですが、「研究開発」によって、事前にトークンを生成する必要があるため、研究開発をしながら自分が得するタイミングで建設アクションを打ちたくなります。
個人的な印象としては、今までのヴァリアブル・フェーズ・オーダーのゲームよりも、相手の行動を予測する部分に重きを置いているゲームと言う感覚で、非常に面白かったです。状況を把握して先手を打つにはタイムラインをしっかり読んだりしないといけないため、なかなか初回プレイでは結果が出にくいように思いますが、繰り返し遊ぶ事で面白くなってくるタイプのゲームだと感じます。
キックスターター版ではコンポーネントが豪華だったり、収納用のトレイが付いていたりする他に部署が16種から32種に増えていてゲーム開始時にランダムで16種類を選ぶ事ができたり、寄付もゲームごとに選択できたりと、リプレイ性が上がってるので手に入るのであれば、こちらの方がおススメです。
ルールの複雑さ: | (7.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (8.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (9.0 / 10) |
かやのレビュー
事業を効率良く発展させるために談合したり、裏切ったり。
カーネギーは、2〜3時間かかる重めのゲームで各プレイヤーの手番が来た時に選んだアクションと同じアクションをスタートプレイヤーから順に処理していきます。
選べるアクションはNEZさんが書いたように4つのアクションで、人事でまず部署にワーカーを配置し部署によっては研修費用を支払わないとワーカーは働きません。
また建築をするには「研究」を進めておかないと建築に必要な条件が揃わないですし研究で輸送トラックを進めておかないと後々建築アクションが打てなくなります。
管理アクションでも現地にワーカーを派遣して資金や資源を稼いだり新しい部署を新設してより効率良く事業を行うことができます。初期条件は各プレイヤーあまり変わらないですがワーカーの配置と部署の建設の仕方で戦略が変わってきます。
面白いのは、ゲームの情報はゲームのスタート時に全て公開されていることです。
なので自分の手番以外では打ちたいアクションが打てないもののおおよそ誰がどのアクションを打ちたいかはボードを見たら予測できます。
他に重要なポイントとしては管理アクションで部署を購入するときに、人が買っている部署とできるだけ相乗りできる部署をしたほうがお互いに購入している部署の効果を発動したいので談合できたりします。
バランスよく資源を回さないと寄付フェーズが来たときに寄付ができずタイミングを逃してしまうということもあったり、次にあのアクションを打ってくると思ったら出し抜かれたりと考える要素は多いです。
運要素はほぼないので、ばちばちの戦いになります。自分で最善手を極めたい人はとても楽しいでしょう。
ルールの複雑さ: | (7.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (2.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
やすやすのレビュー
重いゲームで運要素皆無なのって恐くない?
自分で書いておいてなんですけど、重ゲーでランダム要素がないって、むちゃくちゃ恐くないですか?まるで同卓中のメンバー全員が真剣を持ってにらみあう、言い訳がいっさい効かない命のやり取りをしている感じがないですか?しかもそれが真剣でひと思いにバッサリ、じゃなくて、2~3時間かけて真綿でジワジワ絞め合うような、そんなえげつない闘いです。
一般にランダム要素には大きく2種類あると言われてるかなと思います。インプットランダムネスとアウトプットランダムネスです。このカーネギーには開始時インプットランダム性がわりとあるのですが、もう一方のアウトプットについては皆無となっています。つまり初期配置や初期タイルなんかはゲーム毎に異なるのですが、カード運やダイス運といったゲーム中での偶然性がなく、一度ゲームが開始してしまえば詰将棋、アブストラクトゲームの様相を呈してしまうのです。
と書いてしまうと、カーネギーはまるでとんでもないゲームのように聞こえてしまったかもしれません。しかし実際にはそこまで雁字搦めのパズルゲームとはならないように感じているので、それほど慄く必要もないかと思います。同じレベルのプレーヤー同士なら、きっと気軽に始めて大丈夫でしょう。
そのランダム性をどのように担保しているかというと、インタラクションの強さとゲームバランスの良さで補っているようにぼくには見えます。カーネギーは各アクションの強さや必然性・マップの調整がよくなされており、プレーヤーを常に上手く悩ませるようになっています。何を選んでもどれを選んでも良いような、もしくは良くないように見えるんですね。そのため最終的にはプレーヤーが「これにする!」と半ば勘で決断を下すようなシーンがあり、それがランダム要素のように働くはずです。つまり他人の思考が偶然性となり、インタラクションの強さにより自分にまで影響してくる、といった具合です。もちろんこれは、先々まで見通せる熟練プレーヤーさんには該当しないですよ~。
カーネギーの楽しさ・魅力は、ここにあるとぼくは思っています。選べるアクションは4種類しかなく、ふつうにゲームを楽しむぶんにはそれほど見当外れな動きになりません。つまりある程度ボードゲームを遊んできた人ならなんとなく盤面の方向性が感じられ有効な手が見えやすくなっていますし、(結局は4択なので)それが自然と相手の足枷となるように働くはずです。
かなり重めのゲームであり、ランダム性が薄いというゲーマーズゲームの性質を持ちながらも、上手くパズルを使ったソロプレイ感を付け足すことで遊びやすく調整されているゲームだなと感じました。
ルールの複雑さ: | (8.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |