シャハトの隠れた名作。手番でタイルを1枚取るだけ…なのにこんなに奥深い。(ヒゲ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
シャハト作品の中で、個人的に一番好きなゲームです。
適度な運要素、シンプルなルール…シャハトのデザインの美しさを感じて欲しい。
ネットワーク構築をしながら、決算のタイミングを見計らうオールドユーロゲーム。相手をぶん殴る要素もあって、なかなか手強い。
隠れた名作というにふさわしいシャハト黄金期の作品
ヒゲおすすめ度: | (7.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (6.0 / 10) |
あんおすすめ度: | (6.0 / 10) |
Average: | (6.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
『タイルを一枚選ぶ』ということを悩ましくするためにシャハトがしたこと。
シャハトの代表作と言えば、『王と枢機卿』や『コロレット』などの名前が挙がると思います。
もちろんこれらのゲームの完成度も非常に高く名作です。
そんな私がシャハト作品の中で一番好きなのが、本作『Paris Paris』です。
例によってゲームシステムについては他のレビュアーにぶん投げて、なぜ私がこのゲームをこんなに愛しているのかを言語化してみます。
シャハトのゲームデザインの特徴として、「シンプルなルールながら悩ましい」ということがあると思います。それでは果たして「悩ましい」とはなんでしょうか。
私なりの見解ですが「一定の意味がある選択肢の提示」と「必要な情報が全てプレイヤーに開示されている」ことだと思います。
Paris Parisでプレイヤーが手番でやることは「タイルを1枚取る」だけです。
また得点計算に関わるので、「どのタイルを残すか」ということも大きな要素になります。
タイルのめくり運で自分にとって「タイルを1枚取る」ことに利がなくても「どのタイルを残す」に利がある場合があります。
タイルを取るという行為にいくつかの意味を持たせて、「一定の意味がある選択肢の提示」をしています。
当たり前のことしか言ってない気もしますが、Paris Parisの中では非常にうまく機能しています。
もう1つは、「必要な情報が全てプレイヤーに開示されている」ことです。
タイルを獲得していくゲームで中長期的な見通しを持ってプレイしたければ、タイルの内訳はゲーム開始時に全員に開示されているほうがよいと思います。
ただ、膨大なタイルの内訳を覚えないといけないのは、ゲームの楽しみを削ぐこともあるでしょう。この点についてParis Parisはどうなっているかというと、マップを見れば全て分かるように出来ています。
コマを配置するバス停から出ている道の数=タイルの枚数になっています。つまり、終点のバス停ならば道は1本なのでタイルは1枚、三叉路ならタイルは3枚、十字路なら4枚です。
必要な情報は全てプレイヤーに渡してあり、それをどこまで活用するかはプレイヤー次第というゲームデザインに私はしびれました。そうそう、This is ユーロゲーム!
…ところでどこか再販してくれないですかね。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
NEZのレビュー
タイルを1枚選ぶだけなのに、常にジレンマに苛まれるシンプルなネットワーク構築。
パリの街中を走る観光バスをテーマにしたゲームです。観光バスの通るルートにお店を出して、停留所に到着した観光客に色々と買ってもらおうみたいな感じでしょうか。
ゲームは非常にシンプルで毎ラウンド人数+1枚公開される駅名の書かれたタイルを1枚選んでその場所にお店を置き、余った1枚はボード上のタイル置き場に置く。これだけです。
観光バスの路線は5つあり、各タイルは書かれた駅を通る路線の色となっています。そして、同じ色のタイルが2枚タイル置き場に置かれると、その路線で決算が発生すると言う形です。
駅の中には2つの路線が交差しているところがあり、決算発生時はこの交差している駅を押さえている事が重要になります。と言うのも、決算では「他の路線と交差する駅ごとに、その駅とそこに隣接している駅にある自分の店舗の数」が得点となるからです。決算で勝利点を得るには、まずは交差点の駅に店舗を展開しておいて、さらにそこに隣接する駅(この駅はどの路線でも構いません)にも店舗を展開しておく必要があります。
決算ではボード上に、誰が・どこで・どれだけ得点を獲得する事が出来るかが表現されているので、常に「あの路線で決算が発生すると、Aさんに有利だな。」と言うのが分かりやすくなっています。
タイルについては同じ駅のタイルが複数存在しており、先に店舗を置いても後からその場所を追い出される事も起こり得ます(各駅に置ける店舗の最大数は決まっているのです)。同じ駅のタイルはその駅から出ている道の本数と同じなので、一応後何枚その駅のタイルが残っているかはカウントできるようになっています。ただ、この部分については、残枚数がちょっと分かりずらい印象でした。ゲームの要素として、その駅が他のプレイヤーに追い出される可能性があるのかどうかは結構重要な要素ではあるので、タイル上に数字で表現するなど、もう少し分かりやすい形で表現されていると良かったなと思います。
手番に行うタイルの獲得は、当然ですがスタートプレイヤーから良い物を取っていく事になるのですが、最後に選ぶプレイヤーは決算のコントロールが出来るので、余り物を選ばされている感覚は少なく、自分に有利な路線で決算できるようにタイルを獲得したりと、しっかり考えどころが残されている印象でした(残ったタイルに一番近い駅に店舗があるプレイヤーは1点すぐに貰えるおまけもあります)。
どちらかと言うと古典的なゲームではないかと思いますが、タイルの選択ではしっかりと唸るポイントが用意されており、シンプルなネットワークビルディングとして面白い印象でした。シャハトのゲームとしては、あまり名前の聞かないゲームではないかと思いますが、ネットワークビルディングが好きな方には軽めのゲームとして、機会があれば遊んでみてもいいのではないかなと思います。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
あんのレビュー
一枚のタイルの背後に広がる他者の思惑を感じとれ!
パリの街に自分のお店を出し、観光客を呼び込むことをテーマとしたゲームです。
パリには5本5色のバス路線が走り、路線上にはバスの停留所が配置されています。
各ラウンドでは、バス停留所の地名が書かれたタイルがプレイヤー数+1 枚公開され、そのタイルを各プレイヤーが順番に 1 枚づつ取っていきます。取ったタイルの場所に自分の店コマを配置していき、残った1枚はボード上にストックされます。タイルは5色あり、5本のバス路線の色に対応しています。
ラウンドごとに得点計算が行われます。
最後に残ったタイルの地名に最も近い店コマ1ごとに1 点を得ます。ボード上に既にストックされているタイルと同じ色のタイルが最後に残ったら「グランドツアー」が始まります。「グランドツアー」では 揃ったタイルの色の路線をバスが走ります。その路線の交差点にあるお店、また、そのお店に隣接して配置された同色のお店それぞれに1点が入ります。
これを全てのタイルを使い切るまで行い、最後にボーナスのグランドツアーが行われ、最も点数を得たプレイヤーが勝者となります。
プレイヤーは公開されたタイルを1 枚選ぶだけです。しかし、どのタイルを選ぶとどのような結果になるかは、ボード上から読み取れるようになっています。プレイヤーは、自分の利益と他プレイヤーの利益とを天秤にかけながら、タイルを選んでいくことになります。
1枚のタイルの背後に繋がる影響を見極めること。シンプルなルールで非常にエレガントにシステムを構築しており、このゲームを魅力的なものにしています。
また、5本5色のバス路線は一見複雑そうに見えますが、ほぼ五芒星の形をしています。さらに地名ごとのタイル枚数もボード上の情報からすぐわかるようになっています。タイルの枚数は60。3から5までの数字で全て割り切れるようになっており、非常に美しいコンポーネント構成となっています。
王と枢機卿、ハンザ、パトリッィア、 ズーロレット。シャハトの代表作の多くは 2000年代に生まれています。しかし残念ながらそれ以降に発表される彼のゲームは2000年代頃の輝きが失われ、 また、完全な新作が出版されることもほとんどなくなってしまいました。
目が覚めるような美しいルール、奥深いジレンマを感じるシャハトの新作が発表されることをいまでも期待せざるを得ません。
ルールの複雑さ: | (5 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6 / 10) |
運の要素: | (6 / 10) |
おすすめ度: | (6 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7 / 10) |