わずか8枚のカードが紡ぎ出す歴史絵巻。プレイヤー間の駆け引きが熱い戦略ゲーム。(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
運要素一切なしのアブストラクト味の強いマジョリティゲーム。
ただプレイヤーがどこかの国を担当するわけでない。
たったの8アクションで、全てを決する潔さ。一手が重い重い。
余分な肉を削ぎ落し、絞って絞って絞りきったあとに残った、面白さのコアのようなゲームですね。骨格・関節・筋肉、まるで野生動物のような美しさが感じられます。
ヒゲおすすめ度: | (6.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (7.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (6.0 / 10) |
Average: | (6.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
初版と第2版で変わった点をまとめてみる。
ゲームのシステムについては他の2人に任せるとして…(華麗なる他力本願)
King is Deadは2020年の第2版が話題になりましたが、元々2015年に出版されたゲームです。
さらにさかのぼると『シャムの王』(2007)のリメイクとのこと。(この記事書くために調べるまで知らんかった)
面白いのがあまり間を空けずに、出版社も変えずに第2版が出ていることです。(アートワークは変わった)
初版の方のアートワークもいいんですが、ちょっと渋すぎるかな? まぁこの辺は好みですね。
私はレビューというか初版と第2版のどっち買えばいいんだい!…とお悩みのあなたにシステム上の変更点を書き連ねてみましょうかね。(シャムの王はさすがに入手難なので割愛)
1.終了条件の調整
まずは、終了条件の調整です。これは明確に第2版の方がバランスが取れていると言えます。
ゲームでは全部で8ヶ所のエリアのマジョリティを確認し、3色の軍勢のいずれかが取るまたは同値の場合は別の軍勢に支配される、このいずれか2つになります。
この後者の同値の場合について、初版では4回、第2版では3回でゲーム終了となります。
実際にプレイしてみると分かりますが、4回はまず起きません。なんせ8ヶ所のうちの半分ですから。
ゲーム終了条件によって、勝敗で参照するものが違うのですが初版のルールで4回同値を狙って行うのはほぼ不可能に近いでしょう。第2版の3回なら「頑張ればもしかしたらいけるかも(簡単ではない)」くらいなのでいい調整だと思います。
2.拡張カードの追加
初版と第2版の基本ルールでは全員が同じ8枚のカードを持ちプレイしていくゲームで、カウンティングすれば完全情報ゲームと言えるでしょう。(私はポンコツなのでカウンティングなんてできない)
それはそれで趣があるゲームなのですが、第2版にはランダムで配られる拡張カードがあります。
アブストラクト味が強い方がよければ基本カードで、運要素や不確定要素を増やしてプレイしたいのであれば拡張カードを入れてプレイすることができるのが第2版です。
つまり何が言いたいかっていうと…コレクターでもない限り、買うなら第2版ってこと!
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (3.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
NEZのレビュー
一手の重みと濃厚な駆け引きが味わえる、3人向けエリアマジョリティの良作。
イギリスを舞台に王の死去に伴う3つの勢力の王位争いがテーマのエリアマジョリティゲームです。プレイヤーの立ち位置は、各勢力を裏で操る貴族のようなものかなと思います。
やはり、特筆すべきはゲームを通して、8回しかアクションを行えないと言うアクション数の少なさではないでしょうか。マジョリティ争いをする地域は8で、ゲームを通してのアクション数も8。基本的には1地域1アクションで、自分に有利になるように行動する事を求められるわけですが、そこは相手も同じ。必然的に取捨選択を強いられるシーンと相対する事になります。
この手番数の少なさは一手の重さに繋がり、このゲームの好き嫌いにも関わってくる部分なのかなと感じます。
もう1つ、このゲームのポイントになるのが、ゲーム終了条件です。このゲームでは、「8つの地域でマジョリティ争いが解決する」「3つの地域で最多の勢力が複数」と言う2つの終了条件があり、どちらの終了条件が適用されたかで、勝利条件が変わります。
プレイヤーはカードを使ってアクションをする事で、任意の地域から好きな勢力コマを獲得し、それが勝利条件に繋がります。全ての地域でマジョリティ争いが終わった場合は、最もマジョリティ争いに勝利(王として即位)した勢力のコマを持っているプレイヤーが勝利し、3回引き分けが発生(フランスによる侵略)した場合は、3つの勢力コマのセットをたくさん作ることができたプレイヤーが勝利します。
マジョリティ争いに加えて、どちらの勝利条件に転ぶのかを見据えてコマを揃えていく必要があるので、最後まで気が抜けません。
ロンドン第2版やミュシャ風イラストのハイソサエティを手掛けたオスプレイゲームズならではの、お洒落なコンポーネントも素晴らしく、複雑に絡み合う思惑と重厚な一手の選択を1時間程度で楽しめる良作だと思います。
まずは、箱の大きさと中身のギャップに驚いてください(笑)
ルールの複雑さ: | (4 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (9 / 10) |
運の要素: | (3 / 10) |
おすすめ度: | (7 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7 / 10) |
やすやすのレビュー
猛禽類のごとく狙え!肉食獣のように喰らえ!
限られたカードでやりくりする、至極シンプルなマジョリティゲームです。基本ルールではプレーヤーごとにカードの差異はなく、開始後にも非公開情報はありません。プレイしたカードの効果に従い、自分の勢力をより多くのエリアに、より多くの数を拡大できれば勝利へと近づくわけです。
しかし、このシンプルな「キング・イズ・デッド」を比類なきものにしている要素があります。それは勝利条件と終了条件です。戦況によりどちらの条件も大きく変更される可能性があるのですが、それらはプレーヤーたちの動向によって、まるで天秤のように常にグラグラと揺れっぱなしなのです。
このゲームは3すくみとなる3人プレイが最適だと思いますが、その理由がこの「条件の天秤」です。ひとりだけが優位に立ちそうならば残りのプレーヤー同士で画策し、強引に条件を変更させることができるのです。この天秤はとても不安定、2対1の構図であれば、いとも簡単に揺れ動きます。
そのため優位なプレーヤーほど「誰でも分かる最善手」のような手は指しづらく、常に相手の動向をうかがいながら慎重に物事を進める必要性に駆られます。(基本ルールだと)全情報公開のゲームのため、力業で突き放すことは難しくなっているのです。
つまり、Aの通常終了なら1色をたくさん持っていたら勝者、Bを満たすなら3色の数を均等に所有すれば(いきなり)勝者、となり、状況により真逆のプレーヤーが勝利するのです。相手のコマが見えている状況で、これをジリジリと争うわけですね。
この熱く痺れるような駆け引きがこのゲームの最大の魅力であり、削ぎ落とされた筋肉質のルールがプレーヤーを虜にさせます。
しかし裏返すとそれは難点にもなり得ます。慣れたプレーヤーたちでは、3人で遊ぶ詰将棋のような様相を呈すかもしれません。互いに奇をてらったプレイはできないため、深読みができる(のに最善手は指せないという)思考のアブストラクト迷宮に入ります。
そのため、何度かプレイした後は拡張カードを入れて遊んでみることを強くオススメします。これによりプレーヤー間でカードデッキの差異が生まれ、非公開情報も登場します。新たな駆け引きが必要になるのと同時に、「相手の手が分からないのでここは最善手(っぽいの)を指しておこう」という選択を取りやすくなります。これでゲーム的な軽さが感じられるようになるかもしれません。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (10.0 / 10) |
運の要素: | (3.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |