早めに就寝。ここからは真っ暗闇でそもそも写真が撮れないので写真は撮っていない。
0時前に目覚ましの音で起きる。当たり前だが2時間程度の仮眠では4日分の疲労は取れない。寝たのかわからないような気分で今にも閉じそうな目をこすりながらテントから出ると山頂アタックする人のヘッドライトの明かりがポツポツと見えるだけでそれ以外は何も見えない。
何も見えない中を4時間ほど登ることになる。見えるのはガイドの背中だけで自分がどこにいるのか見当もつかない。山頂までの1200mを4時間で一気に登るので高山病対策のためにゆっくり歩く。
想像してみてほしい。見えるのは足元とガイドの背中だけ。辺りは深淵の闇。今どのくらい登ったのか、山頂はすぐそこなのか、はたまた遥か遠くにあるのか何もわからない。先の見えない中、1秒に1歩程度のスピードで凍えそうな寒さの中4時間ひたすら登り続ける。肉体的にも精神的にも本当にきつかった。キリマンジャロに登った人が山頂アタックの時は死ぬかと思ったと言っていたのだが、決して誇張ではない。
夜明け前で太陽が出ていないので、スタートした時から氷点下だったのだが、5500mを超えたあたりから風が強くなり寒さが厳しくなる。カイロを使っても手足の指先の感覚は全くなかった。測ったわけではないが山頂付近はマイナス20度になるので相当寒かったのだと思う。
単調な登りと睡眠不足が合間って非常に眠く、意識が遠のきそうだった。実際何も考えられず、早く着け、それだけしか考えていなかった。そして大きな岩陰が見えるとステラポイントに着く。5730m。
(これは昼間の写真。)
それなりに立派な看板が立っているのでステラポイントの存在を知らない人は山頂と勘違いする。ステラポイントを見た時は、ついにここまで来たんだ。もうすぐそこが山頂だと感極まった。看板を見たことでやっと山頂に近づいたという実感が持てたからだと思う。本当に限界な人はここで引き返すらしい。それにしてもなぜ山頂の100m手前にこんな看板を立てたのだろうか。
ステラポイントを過ぎると氷河が見えてくる。きつい登りはステラポイントまでで後は緩やかな登りか平坦な道が続く。うっすらとしか見えないのだが明らかに氷があって、聞いてはいたのだがアフリカのしかも赤道付近に氷があることに感動を覚えた。
遠くに人が集まっている場所が見える。山頂だ。
5時少し前に登頂する。Congratulations! そう言われてガイドと抱き合った。
ついにやった。アフリカ最高峰キリマンジャロを制した。
標高は5895mで富士山より2000m以上高い。遠い道のりだった。毎年死者が出てるし、親にすごく心配されたというのもあって生きて帰ってこれるか心配だったがなんとか登ることができた。
登頂して感じたのは感動よりも達成感と安堵だった。
夜明け。地平線一面にオレンジ色が広がる様子が美しい。白いのが氷河。
写真を撮り終わると下山を開始する。寒さが酷い時は山頂に10分しかいれないらしい。自分は30分くらいいることができた。
氷河。早ければ2022年、遅くとも2033年には氷河が溶けてなくなるらしいのでこれが見れなくなってしまうと思うと悲しい。
来た時には分からなかった道が太陽に照れし出される。
ガイド。仕事とはいえ、僕一人のためにありがとう。荷物を持ってくれたりしていいガイドだった。いつも気遣ってくれて彼には感謝しきれない。
登っている時に右側にうっすら山のようなものが見えたのだが、それがこのマウェンジ峰だった。キリマンジャロ山の峰で標高5151m。太陽が出て明るくなると山頂アタックの時には真っ暗で何も見えていなかった空白の4時間の景色が見えるようになり、ここはこんな感じだったのかと終始感動していた。
この右下の坂を4時間近く登り続ける。奥にあるのがマウェンジ峰。
山頂から次のキャンプサイトまで下山するのがかなりきつかった。というのも山頂に登ったことで目標を達成してしまったので目指すものがなくなってしまったということ。また、2時間しか寝ていないので疲れがとれていないし、とにかく眠い。そして疲労。山頂から次のキャンプサイトまで2800m下らなければならない。今日の0時から山頂まで1200m登っているから実質5日目だけで4000m上り下りすることになる。この坂が砂漠のような砂で足を取られるし、滑らないように踏ん張りながら降りなければならない。乳酸が溜まった足にはきつい。
バラフ・キャンプからステラポイントを通りウフルピーク(山頂)へ。そしてムウェカ・キャンプまで下る。この行程を1日でこなさなければならないのだ。
キャンプサイトが見えて来た。登りに4時間半、山頂に30分ほどいて下りに2時間。7時間前にはここにいたとは思えない。ここでお昼を食べたらそのまま1600m下の今日のキャンプ地まで下山する。
森林限界より低いところまで下りたため草が生い茂る。
相変わらずの霧。やっとの思いでキャンプサイトに着いたのだがそんなパッとしないキャンプ地だったということと目標を達成したことによる満足感からかキャンプ地の写真を撮らなかった。
疲れと寝不足で一瞬で寝ることができた。続きます。
次→キリマンジャロ登山(6日目)
ー目次ー
・気をつけてほしいこと(ツアー会社選び、チップ代、持ち物など)
・いざ登山開始!〜6日間の体験記〜
>1日目
>2日目
>3日目
>4日目
>5日目
>6日目と登り終えた感想