ロンドン大火からの復興をテーマにした手番順とタイル選択が軽快な中量級ゲーム。(ヒゲ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
2022年、いい感じの中量級ゲーム当たり年ではないか?
シンプルなシステムながらも、しっかりゲームした感のある良作。
しゃがむのか、突っ込むのかを毎回突き付けてくる中量級。ゲームの流れは単調だけど、常にプレイヤーに選択を迫ってくる。
ボードゲームらしさが存分に光る、クラスの優等生的存在。安心して両親に紹介できる、婚約者的存在。
ヒゲおすすめ度: | (7 / 10) |
NEZおすすめ度: | (7 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7 / 10) |
Average: | (7 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
ちょうどいい中量級ゲームをお探しの方。これ、いい感じです。
2021年の面白かったゲームの記事で、私はこんなことを書いていました。
「2021年は軽量級と重量級はいいものがあったが中量級ゲームで当たりが少なかったので2022年には中量級ゲームに期待」。
そんな期待を持っていた2022年は中量級ゲームの良作が多く出版されているのではないかと感じています。
例えば、エカチェリーナ2世。
これも中量級ゲームで2022年、かなり良かったと思います。
(なおBGG評価はウクライナ情勢への抗議的な意味で下落中…)
2022年下半期で話題になった中量級ゲームといえばこちらの『オールドロンドンブリッジ』ではないでしょうか?
オススメプレイ人数は4人。
プレイ時間はインスト込み1時間程度。まぁインストのスムーズさ次第。
もうこれくらいでいいわけよ、私みたいなオールドユーロゲーム好きには。クイーンのゲームには珍しく箱いっぱいにコンポーネントがあります。
作者はガブリエル・ブボラとレオ・コロヴィーニ。
コロヴィーニに関しては有名なので割愛しますが、ガブリエル・ブボラの方は『敦煌の商人』あたりが有名でしょうか?まだ作品数は多くないですが、期待のデザイナーではないかと思います。
基本的なシステム面は他のレビュアーに任せるとして、やはり目を引くのはこのコンポーネントでしょう。
アートワークも古き良きユーロゲームを踏襲した落ち着いた色彩になっています。
プレイ感が非常に軽く、1ラウンド目が終わった時には全員が「え?本当にこれだけ?」といったほどです。
ただ簡単すぎるというわけでもありません。
取ったタイルは全員見えているので、ほどよく他人のしたいことが把握できつつ、自分の都合のいいタイルを獲得していく。そのために手番順をどう調整するかの悩ましさがあり、しっかりプレイした感じになります。
個人的に面白いと思った点は手番順の決定の部分です。
このようなゲームでは基本的には早い手番を取りたいものですが、あえて後手番になってタイルがめくれるのを待つ状況もあり得ます。(ただし特殊能力を使うか、お金を払うマスを踏む必要あり。)
初見では礼拝堂プレイが強い気がしましたが、別の機会に他の戦略でもトップ取れたのでゲームバランスもいいように思います。
上級ルールでゲーム終了時の得点計算を可変するタイルもあるのでリプレイ性もなかなか◎。
一つ一つのシステムに新規性はそれほどないように思いますが、ちょうどいい具合にバランスを取ってある本作は非常にお勧めです。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (5.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
NEZのレビュー
ゲームに緩急をつけるのは、あなた。
ロンドン大火からの復興の際に、橋の上に建物を建てたと言う歴史的な出来事をテーマとしたゲームです。
毎ラウンド、手番では建物を1つ選択して、自分の橋の上に建てていきます。そして、その後で建物ごとに決められたアクションを実行します。たった、これだけなので箱とコンポーネントでちょっと構えていると、「えっ?これだけなんですか?」と言った具合に肩透かしを食らいます。非常にシンプルですが、12ラウンドこれを繰り返していくだけなので、少し単調と思われるかもしれません。
では、このゲームの面白さについてですが、手番順の決定方法が挙げられるのではないかと思います。ラウンドの最初にプレイヤーは手札のパワーカードを1枚選んで同時公開します。そして、強いパワーカードを出したプレイヤーから手番を行います。建物の獲得スペースは各建物1人まで、さらに勝利点を支払うことで好きな建物を獲得できるエリアが1つあります。ですので、手番が遅くなるほど獲得できる建物は限定されます。
もちろん、パワーカードは使いきりなので強いカードを使い続けていく事はできません(パワーカードの補充は建物アクションの1つです)。ですので、場の建物を見てしゃがむのか突っ込むのかを考えていかないといけません。
パワーカードはゲームの最後に合計値を争うことになりますしね。
また、勝利点を支払うことで好きな建物を獲得できるエリアがあることで、場に欲しい建物がない時は、敢えて手番順を送らせて誰かが獲得してめくれた建物に期待するなんて事もできるのがニクいです。しかし、それも自分の手番まで残っているかは分かりません。
建物には種類、紋章、数字が描かれています。それぞれに意味があり、建物の種類は実行できるアクション、紋章はアクションの強さ、数字は橋に建物の建てられる場所を表しています。
建物のアクションは「勝利点(生点)の獲得」「パワーカードの補充」「礼拝堂トラックを進める」「門トラックを進める」の4種類があります。そして、それぞれのアクションの強さは、個人の橋にある全ての建物に描かれた紋章のうち、今建てた建物に描かれた紋章の数になります。同じ色の紋章を集めていくと、アクションの強度が高まるわけですね。
礼拝堂トラックや門トラックは勝利点にも関係しますが、それぞれ「タイブレーク時の判定」と「特殊アクションタイルの獲得」に関係します。特にパワーカードは0~4しかないので、バッティングが良く発生するため、礼拝堂トラックはなるべく進めておきたいところです。
基本的には各建物アクションに絡んだマジョリティ争いによる最終勝利点があるので、それも睨んでどのアクションを重視していくのか考えていくのも面白いポイントだと思います。
毎ラウンド、場に絡んだ建物を見ながら、どのくらいのパワーカードを突っ込むのかを考えるのが、とても面白いゲームでした。個人的には、ゲームの展開を作るのはプレイヤー次第と言う気がするので、ボードゲームに慣れたプレイヤーで遊ぶと良いのではないかと思います。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
やすやすのレビュー
橋だけじゃなくシステムもオールド風。
「1ラウンドに1手番で1アクションの1効果を12ラウンド」
そう聞いたらどうでしょうか、とてもスッキリしている仕組みだと感じませんか。こういった原則が貫かれているゲームは、多くの場合で幅広い層にリーチできると思います。ただし単調になることは避けられないし、インタラクションが内向きでも外向きでもダイレクトになるので、バランス取りをプレーヤーに任されることになりがちです。ぼくはボードゲーム史をさっぱり知らないので判じることはできませんが、何となくこのオールドロンドンブリッジもそこに入るゲームなのかな、と感じています。
オールドユーロを彷彿とさせるイラストとコンポーネントの堅牢さに加えてこの分かりやすさは、古臭い印象を受けてしまうかもしれません。さらに手番順をパワーカードで競るという仕組みがゲームの肝になっていたりするのも、古参のゲーマーにとっては食傷要素かもしれません。ただそこからのプレイはわりと近代化されており、早取りやエンジンビルドなどのインダイレクトな仕組みがメインとなっていますね。
こういう言い方は陳腐なように聞こえるかもしれませんが、しかしそう感じるので言わせてください。
「一周して新鮮だし、それでちょうど良く、サックサク」
オールドロンドンブリッジは、ボードゲーム愛好歴が長い方にとっては水のように飲み込みやすいでしょうし、入り口に立っているような方にも少しのステップアップとして絶妙な高さを演出するでしょう。ゲーム性を変化させるバリアントルールも同梱されているので、そういう意味ではとても幅広い層にアプローチできる可能性があるゲームとなっていると思います。
ボードゲームらしさにあふれたライト寄りの中量級ゲームです。
ただしぼくは4人でしかプレイしていないのですが、4人ベストのゲームであるように思います。3人と4人ではずいぶんプレイ感も変わる雰囲気があるので、もしかしたらプレイ人数によってはこの「ちょうど良い」感は失われる可能性があるかもしれないことが、少し気がかりです。
ルールの複雑さ: | (6.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |