ファストスロース / Fast Sloths

レビュー記事ヒゲおすすめ☆8以上ヒゲ好きなんですけ度☆8以上
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デザイナー: Friedemann Friese
アートワーク: Harald Lieske
出版社2F-Spiele, Stronghold Games(cited from)
参照 BoardGame Geek

自分では1歩も動けないレースゲーム!? ピック&デリバリー“される”ゲーム!?
流石フリーゼ。何を言っているのかさっぱり分からない。しかし面白いレースゲーム(ヒゲ)

ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値

ヒゲ
ヒゲ

フリーゼの作品で日本語版が出版されていなかった名作レースゲーム。
サニーバードから日本語版が発売される!

NEZ
NEZ

レースゲームなのに、本人が動かないと言う逆転の発想!お願い、動いてナマケモノ!!

やすやす
やすやす

コース取りも含めて多くのことが自由なので、いわゆるレースゲームとは違いピック&デリバリーに近いかなと思います。そこに、フリーゼさんらしい既存のゲームにはない新鮮なプレイ感を与えてくれる工夫が散りばめられていますね!

ヒゲおすすめ度:8 out of 10 stars (8 / 10)
NEZおすすめ度:6 out of 10 stars (6 / 10)
やすやすおすすめ度:7 out of 10 stars (7 / 10)
Average:7 out of 10 stars (7 / 10)

各レビュアーによる個別レビュー

ヒゲのレビュー

奇抜なアイデアをまとめあげる天才・フリーゼの手腕を堪能できる入門作としてどうぞ。

天才ボードゲームデザイナー・フリードマン・フリーゼ。自身の出版社2-F Spieleから出版されるゲームは彼のイニシャルであるFを冠し、緑のパッケージで出版されています。2-F Spieleのゲームの日本語版はアークライトから出版されていますが、こちらのファストスロースは日本語版は出版されていませんでした。

そこで、日本語版の出版に名乗りをあげたのが長崎県にありますサニーバードさん。
Podcast『おしゃべりサニバ』(通称:おしゃサニ)でも有名ですね。
第209回には私がオンラインで出演させていただきフリードマン・フリーゼの魅力を伝えさせていただきました。
またこのご縁からファストスロース日本語版に校正として関わらせていただくことになりました。大ファンであるフリーゼのゲームに自分の名前がクレジットされるとは…このような機会を与えてくれたサニーバードさんには心から感謝しています。

まぁそんなこんなで、正直この作品の客観的なレビューなんてできません。
ただ、フリーゼのゲームを遊び倒している私から1つだけ言えることは…

フリーゼのゲーム中でもトップクラスの出来です。

既存のシステムや概念の根本をひっくり返すアイデア
運要素を排除したシステム
の構築。
12種類(プロモ入れると13種類)の動物の組み合わせで広がるルールの可変性
そして、これらのともすれば破綻してしまうような奇抜なアイデアをまとめあげるバランス感覚。

改めてフリードマン・フリーゼというゲームデザイナーは天才だと痛感しました。
本作は、いわゆるゲーマーズゲームではなく誰でも楽しめるような分かりやすさがあります。
しかし勝つためにはしっかりとした計画性が求められる懐の深いゲームだと言えるでしょう。

オススメプレイ人数は4人。盤面の変化は目まぐるしいので、自分の手番が来るまでに盤面が変化する可能性が高いので最善手であるプランAと共にプランBくらいまで考えておくとスムーズに進みます。60分ほどで終わる素晴らしい中量級ゲームです。

こんな人におすすめ

運要素がない独自のシステムのレースゲームをお探しの方。
あるいは、ロナルド君(ルールブック参照)。

ルールの複雑さ:5 out of 10 stars (5 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:7 out of 10 stars (7 / 10)
運の要素:2 out of 10 stars (2 / 10)
おすすめ度:8 out of 10 stars (8 / 10)
自分は好きですけ度:8 out of 10 stars (8 / 10)

NEZのレビュー

動け!ナマケモノ!なぜ、動かん!!

ナマケモノになって、木の葉を集めるレースゲームです。デザイナーはフリードマン・フリーゼ氏です。このゲームの特徴は何と言ってもナマケモノだから自分で動かないと言う点でしょう。

それでは、どうやって移動するのか?
それはボード上に配置された他の動物に運んでもらうのです。そして、プレイヤーが手番に移動させるのもナマケモノではなく、これらの動物になります。ナマケモノ自体は動く事は出来ませんが、隣接マスに他の動物が来てくれればピックして乗せてもらう事ができます。これを上手く利用して、ボード上に散らばった木の葉を集めていきます。
ここで1つ問題なのは、これらの動物は各プレイヤーに用意されているわけではなく、全てのプレイヤーで共有されているところです。事前にルートを検討していても他のプレイヤーに先に動物を利用され、自分の手番になった頃には、全然違う場所に動物が移動している何て事も発生します。このままならないところが面白く感じました。

各動物には様々な特殊能力や移動可能な地形があります。例えば、ゾウなら「移動後にナマケモノを3マス先に投げ飛ばす」であったり、「ヤギなら岩山を高速移動できる」などです。移動のためには手番の開始時にカードを引き、それをプレイする事でカードに書かれた数字の合計分だけ移動する事になります。
このカードも一癖あり、ゲーム開始時点では山札の上の方が小さい数字になっていて、下に行くほど数字が大きくなっていきます。一気に進むためには下に埋まったカードを獲得したいのですが、もたもたしていると動物が他のプレイヤーに使われてしまうと言うちょっとしたジレンマが味わえます。
また、山札は動物ごとに作られるため、他のプレイヤーが何の動物を取っていったかも分かるようになっています。お目当ての動物が競合すると、ドキドキしますね。

レースゲームですので、一度遅れてしまうと挽回が難しくなってしまいますが、このゲームでは木の葉を集めるごとに、カードの獲得枚数や手札上限が少なくなっていく事で補填の意味合いを付けています。

動物の種類も多くゲームごとに使う動物が異なり、ボードも組み合わせにする事でランダム性を確保しており、繰り返し遊ぶ事も出来るのではないかと思います。
動物達をどうやってリレーさせていくのが面白く、それでいて決して計画通りに進まないもどかしさ。ちょっと変わったレースゲームを遊びたいと思ったら、是非遊んでみて頂きたいゲームです。プレイ感もそんなに重たく感じませんので、色々な方に受け入れられるゲームになるかなと思います。

こんな人におすすめ

ちょっと風変わりなレースゲームをやりたい人

ルールの複雑さ:5 out of 10 stars (5.0 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:7 out of 10 stars (7.0 / 10)
運の要素:4 out of 10 stars (4.0 / 10)
おすすめ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
自分は好きですけ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)

やすやすのレビュー

ナマケるかナマケないか、それが問題だ。

マップ上に散らばるフラグを回収するために、ルートを構築しながらナマケモノを移動させていきます。道中でいろいろな動物カードを使用しますが、それぞれの効果はまったく異なります。さて、どんな順番でどの動物の力を得ていけばいいのでしょうか、と普通に概略を説明するならこんな感じでしょうか。

ファストスロース

ほのぼのとしたフィールド

ただし冒頭に書いたように、このゲームには一筋縄ではないフリーゼさんらしい、ピック&デリバリーっぽくない新しい試みがいくつも取り入れられていると思いましたね。巷間で囁かれているような、「フリーゼさんのエルフェンランド」という印象でもないです。

ぼくにとっての新しい体験だったこと
  • ピック&デリバリーなのに、そのデリバリールートの方を動かす
  • 使用カードの組み合わせが自由なため、同マップの繰り返しプレイでも体験は多彩に変化する。
  • 他プレーヤーの動向でも手札の強弱が変化するため、思わぬ展開を楽しめる。

それぞれについて、少しずつ「新しく感じたこと」を書いてみますね。

このゲームの本質は、自分に都合の良いルート構築をしていく遊び、だと思っています。しかしそのルートは全プレーヤー共通となっています。手番にできること(つまりプレーヤーがすること)はその共通ルートをいじくりまわすことだけなので、結果として、他プレーヤーが敷いたルートを改築しまくることになる感覚は新鮮でした。

一般的に、ピック&デリバリーを同じマップで繰り返しプレイすると、自然とその特性に応じて似た展開になりがちですが、そこに「今回使用するルートの特性」(つまり動物カードの能力)の組み合わせの多様さを使うことでリプレイ性を高めています。バランス調整はプレーヤーに投げて、面白さの広がりを重視しているところにフリーゼさんらしさを感じましたね。慣れればランダマイザ等を使って、より理不尽な状況を作っても良さそう。

他のプレーヤーによってそのゲーム中に獲得されたカード枚数でも、個々の能力が変化します。つまりプレイ前にマップ&カードのセットとどれだけ睨み合ってもその回の攻略法は分からず、ゲーム中に柔軟な対応を迫られます。

ファストスロース

絵本調の動物イラストたち

リプレイ性が非常に高く、ほどほどのインタラクションとプレイ時間となっているファストスロースは、幅広い方に受け入れられる可能性があるゲームですね。フリーゼさん、どうしたんでしょう(?)。ただし、それは物事の裏返しにもなります。個人的な感覚として、気になった点もあるんですね。それを抽象的な表現ですると、いつもより切れ味がない、というところです。

切れ味って何?ということになりますが、このゲームにおいては、「いったい見通しが立っているのか立っていないのか初心者には分かりにくそう」というところですね。いわゆる目的カードを引く、というようなことがないため、回収すべきフラグは(ほぼ)最初から見えてしまっています。にもかかわらず、状況によってはまさにナマケモノのようになってしまうため、ゲーム上のドラマチックな展開に欠け、中盤は少しダレるように感じましたね。どんなゲームでもダレることは仕方ないと思うのですが、ダレていることが他のプレーヤーから丸見えである、という部分が気になりました。

しかし翻えれば、理不尽な展開や他プレーヤーへの妨害などが基本的に少ないため、みんなで楽しめるゲームになっていると思います。(キャッチ―な方の)フリーゼさんを代表する作品のひとつに挙げても良いのかなと感じるほどです。

こんな人におすすめ

家族やボードゲーム会でのんびりしたい人。リプレイ性が高いゲームで遊びたい人。むしろフリーゼさんの作品なら何でも好きなコアゲーマー。

ルールの複雑さ:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
プレイヤー間の駆け引き:5 out of 10 stars (5.0 / 10)
運の要素:3 out of 10 stars (3.0 / 10)
おすすめ度:7 out of 10 stars (7.0 / 10)
自分は好きですけ度:6 out of 10 stars (6.0 / 10)
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