不確定要素がドラマを生む名作エリアマジョリティ。(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
1996年ドイツ年間ゲーム大賞受賞作品。
デザインはクラマー&ウルリッヒ、アートワークはドリス。古き良きユーロよ。
シンプルながら、様々な仕掛けでドラマが生まれる名作エリアマジョリティゲーム。
(ぼくが感じる)ボードゲームらしさ満載のゲーム。ベスト5人のゲームだし、5人ならベストのゲームのひとつ。ある程度いろいろなボードゲームを嗜んだら、ぜひこの旧作を触れに帰ってきてみてください。
ヒゲおすすめ度: | (6 / 10) |
NEZおすすめ度: | (8 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7 / 10) |
Average: | (7 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
エリアマジョリティとはなんたるかを体験するにはもってこい。
まず、評価を見ていただければ分かりますが、私はこのゲームが大好きです。
ただ、2022年の現代において、万人におススメできるものでもないように思うのでおすすめ度は低め。
ベスト人数は5人。プレイ時間は公称よりも少しかかる印象で120分くらいかな。
いわゆるエリアマジョリティの傑作で、エリアマジョリティとはなんたるかを体験するには非常にいい作品でしょう。エルグランデ好きならタマニーホールも好き説は引き続き提唱していきたい。
カードの出し方の制限(前に出されているのと同じ数字は出せない)とアクションカードの巡り運でドラマが生まれます。
カードと手番の巡り運的に序盤で手持ちのコマを大量に捨てさせられると挽回が厳しい印象。
あとはちょっとだけ地名の見間違いが起きそうだからそこは念を押しておいた方がいいかも。
まぁこれほどの名作の前には些細な問題ですよ。
個人的に、ビッグボックスでミープルになったけど、四角いキューブの方が好みなのは内緒。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
NEZのレビュー
たかがエリアマジョリティ。されど、エリアマジョリティ。
中世スペインを舞台にしたエリアマジョリティのゲームです。ゲームでは、手元から騎士を各地域に派遣し、規定のラウンド経過後に発生する決算で騎士の数でマジョリティ争いをします。
各ラウンドは2つのフェーズに分かれており、最初は手札のパワーカードをプレイする事で、その後の手番順とストックから手元に騎士を持ってきます。
パワーカードは数字が大きいほど、後の手番順は早くなりますが、ストックから補充される騎士の量が少ないため、ボード上にばら蒔ける騎士の数が少なくなります。
騎士はすぐに足りなくなるため、必然的にどこかで手番順を犠牲にして、ストックから補充しなければいけません。シンプルですが、どこで補充していくかは悩ましいですね。
2つ目のフェーズはボードへの騎士の配置なのですが、ここも一癖あって、毎ラウンド公開されているアクションカードを選択して、アクションと騎士の配置を行います。アクションカードには配置できる騎士の数が書かれており、やはり配置できる騎士の数が少ないほど、嫌らしいアクションが可能です。
アクションの中には、騎士を勝手に動かしたり、突然特定の場所で決算を起こしたりと盤面や得点に影響があるものも多く、「あのアクションは押さえないとヤバい。でも、騎士も増やしときたい。」みたいな状況に遭遇します。
さらに、ボードにはこけしみたいな王様コマが聳え立っており、王様のいるエリアは不可侵、そして、騎士は基本的に王様のエリアの周囲にしか置けません。また、王様のいるエリアでマジョリティ1位だと決算時に追加の勝利点を貰えるので、決算前は王様誘致が加速します(王様の移動はアクションカードで毎回選択可能なのです)。
さらにさらに、騎士の配置では塔と呼ばれる特殊なエリアがあります。ここは筒のような立体のコンポーネントで表現され、騎士をボードに配置する代わりに、塔に任意の個数の騎士を放り込む事ができます。決算の度に、塔自体もマジョリティによる勝利点計算が発生するのですが、その後で各プレイヤーが秘密裏に指定したエリアに塔の騎士を追加されます。
つまり決算のタイミングで、ボード上で見えない騎士が突然まとめて降ってくる可能性があるため、ギリギリでマジョリティ争いで勝とうと思うと、塔から相手の騎士が突然やってきて負けてしまうなんて事もしばしばあります。如何に相手の裏をかいてマジョリティを取りにいくかを考えるのがとても楽しく、醍醐味でもあります。
総評として、シンプルなエリアマジョリティでありながら、アクションカードや塔による不確定要素がもたらすちょっとした心理戦やドラマがとても盛り上がる中量級ゲームといった印象です。少しゲームに慣れてきたプレイヤーには一度遊んでみて欲しい名作だと思います。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (8.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
やすやすのレビュー
エルグランデ-それは無人島へ持っていきたいゲームのひとつ。
ボードゲームと言えばエリアマジョリティ、エリアマジョリティと言えばエルグランデ。つまりボードゲームと言えばエルグランデ。そんな時代があった…のか分からないけど、それほどボードゲーム史に燦然と輝く作品だと思います。ぼくも早い段階でこのゲームに触れ、底なし沼に引きずり込まれました。その魅力を、手短に書いてみますね。
ベーシックなエリアマジョリティほど、シビアなゲームシステムはありません。数の暴力とはこのことです。優劣が勝敗が誰の目にも瞭然で、それを自分だけの力で覆すことは基本的に無理だという構造になっているからです。
ふつうのゲームは公平を期すために各プレーヤーは同手番数ですし、できることも基本的には同じですよね。つまり自分が手番時に1勢力を増やせば、相手も手番時に同じ場所へ1増援を送り込むことができることでしょう。しかしそれだとゲームにならないわけで、このパワーバランスを崩す外的な要因がどうなっているのかがそのゲームの性質と言えることでしょう。
エルグランデでは、それを「カードのめくり運」と「他人の動き」に委ねています。なかでも特に後者が大きく影響を与えます。たしかにカードごとの強弱は大きいのですが、それに対して各人のできることがほとんどないため、自然とプレーヤーは後者の「他人の動き」に注意を払いその力をいかに利用するかが焦点になっていきます。
他人の動きを利用する、それにはつまり盤外戦術というか、アナログゲームならではのヘイトコントロールが必要になるわけですね。「なんだ、そういうのなら他のゲームもそうじゃん」と思われるかもしれません。たしかにそうかもしれません、しかしちょっと待ってください。エルグランデでは、全員の全手番がゲームチェンジャーになり得えるほどのパワーを秘めているのです。無駄な一手番がありません、ここが魅力なんです。優勢でも劣勢でも、最後の一手までしっかり盤面と勝敗に干渉できるのです。
他人にどこまでもへりくだり、他人の思惑を推察し、他人を出し抜き踏みつけて、手にした玉座ほど尊いものはありません。威圧的にそびえ立つスペイン王、中世の牢獄さながらの塔、これらのコンポーネントも雰囲気たっぷり、きっとゲームを盛り上げてくれることでしょう。
シンプルなルールで、しっかりと楽しい時間を過ごせる傑作ですよ!
旧いゲームでもあり、現代風なアレンジはありません。「下家・上家」をきちんと分かり、「お仕事」を理解しているメンバーで遊ぶことが推奨されます。よく知った仲の友だちと、遠慮なく殴り殴られすることを楽しむゲームですからね。その点ではたしかに人(というかグループ)を選ぶゲームとも言えますが、それを許容できる仲間がいるならぜひ遊んでほしいと思います。
ルールの複雑さ: | (6 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8 / 10) |
運の要素: | (6 / 10) |
おすすめ度: | (7 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8 / 10) |