2021年に人気が再燃!? 競りとピックアンドデリバリーの名作鉄道ゲーム。
なぜ今『蒸気の時代』がリヴァイバルしたのか? (ヒゲ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
2002年発表の鉄道ゲームが2019年にEagle-Gryphon Gamesからリメイク発売。
トレンドに合っているとは言い難いクラシックな作りながらも一大リヴァイバルに!
まぁかくいう私もその1人。そうそう、こういうのでいいんだよ!
ゲームの展開が進むにつれて、悩ましいポイントが移っていくけど、最後まで頭抱える!!キツいけど、面白い!面白いけど、キツい!!
「線路を敷いて、人や物を配達し、収入を得る」という、まさに鉄道ゲームかつピック&デリバリーそのもの。複数人やソロで何度か遊びましたが、デラックス版でしかプレイしていないので、ここではそのレビューとなります。「(ゲームから)脱落」だけなんとかしてほしいかな~。
ヒゲおすすめ度: | (8.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (7.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (7.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
インタラクション、インタラクション、インタラクション!!(ちょっとだけダイス運)
2002年に初版が発売され、それから拡張マップが出され続けている名作。
2019年にKickstarterを利用して、Eagle-Gryphon Gamesから『蒸気の時代DX版』としてリメイクが発売され、日本でも非常に多くのゲーマーを魅了し一大リヴァイバルを巻き起こしている。
デザイナーはマーティン・ワレス。その他の代表作としては『ブラス』軽めのゲームでいうと『ウント・チュース』あたりが有名でしょうか。『ブラス』も黒と白でリメイクがきて話題になったよね。
おそらく、他のレビューアー方がシステムの面白さについては語ってくれると思われるので(クロスレビューサイト特有の他力本願)、少しメタ的な視点でのレビューをしてみようと思います。
まず、蒸気の時代で特徴的なのは①株式の発行(いわゆる借金)と②手番順の競りが挙げられると思います。これらを現在のトレンド(2021年執筆)と少し比較しつつ、語っていきます。
①株式の発行(いわゆる借金)
これはワレスゲームあるあるだろう。株式発行という名目の借金から始まる。
この株式は返済はできず、毎ラウンド配当という名目の利子を支払い続ける必要がある。
お金が苦しいゲームというのは多いが、ラウンドの最初に手番順で(拡張マップでここを変更するものもある)、発行していくところに現代のゲームには少なくなったインタラクションが生まれる。
「2株発行します~」「あぁ、じゃあ私は3株~」といった具合で、お互いの資金量を見たうえでの発行により、以降のフェイズで何をするつもりかをある程度みることができる。
うーん、クラシカル(褒めてます。)
②手番順の競り
そして、第2フェイズでこれですよ。競り。
初版が発売された当時は競りゲーム全盛の時代が徐々に終わりへと向かっていく頃。
その当時(私はまだボードゲームしていないので伝聞での感覚だが)はまだ流行りのシステムだったのかもしれないが、現代(2021年)においては競りのシステムを組み込んだゲームは少なくともメインストリームには少ないと言える。
理由は簡単で、昔のゲームはプレイヤー側にゲームバランスを委ねていて現代のゲームはシステム側でバランスを取っているという雰囲気がある。
その流れの中で、競りというシステムはまさにプレイヤー間でのバランスの取り合いであり、ゲームの進行具合がその相場感によって形作られていく。直接的なインタラクションによって進んでいく危うさという点があるので、ここは好き嫌いが分かれるところである。お察しの通り、私は好き。
うーん、クラシカル。(2回目2段落振りの出場)
現代のゲームはもう少しシステムデザインでバランスを取ってくれている(ものが多い)ので、このあたりも現代のゲームのトレンドとの若干の乖離を感じる。
最初の2つのフェイズのみに注目したが、ここだけでもインタラクションだらけである。
これ以降のフェイズも、共有の盤面に自分の線路を引いていき、商品を輸送していく…でも誰の線路を使ってもいいし、どの商品を輸送してもいいよ!…とか書いてある。もうこれ以降も、自動で行う収入と支払い、収入の減少(!?)以外は徹頭徹尾、インタラクションである。
現代のゲームは個人ボードの登場等も含めて、自分の手元をこねたり、カードプレイで自分の強化をしていったりするものが多い。この『蒸気の時代』にはもちろん個人ボードなんてないし、共有の盤面しかない。
そういえば、盤面に商品を補充する選択がまさかのダイス(突然の運要素)で、ここは賛否両論あると思う。でもここまでインタラクションの塊だったんだから、多少の息継ぎは欲しいところ。個人的には好印象。
こんなにも現代のトレンドと乖離したゲームが、なぜこれほどリヴァイバルを起こせたのか。
そう、私もこの記事を読んでいるあなたも、他人との盤面でのやり取り、つまりインタラクションを求めているのですよ。
あと、『蒸気の時代』が好きな人は『電力会社』も好き説。あると思います。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (8.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
NEZのレビュー
序盤の黒字化、中盤の機関車強化、終盤の商品輸送。移り行く悩ましさにずっと苛まれる傑作ピックアンドデリバー。
借金をしろ、話はそれからだ。
と言うことで、みんな大好き鉄道ゲームです。作者はマーティン・ワレス氏。そして、その代名詞とも言えるゲームの1つがこの蒸気の時代です。
プレイヤーは鉄道会社を経営し、鉄道網を作り上げ、商品を輸送していきます。システム的には競り、ピックアンドデリバー、ネットワーク構築と言ったところでしょうか。
ゲームは既定のラウンドを行い、収入や敷設した線路の数などで勝敗をつけます。各ラウンドはいくつかのフェーズに分かれています。
最初に行うのは「株式の発行」です。聞こえは良いですが、要するに借金です。当然株なので配当金を毎ラウンド払わないといけません。5金貰って延々と1金払う。なんなら、ゲーム開始時に2株発行しているので、何もしてなくても2金は出ていきます。
つらい。
また、株式の発行はここでしか行えません。序盤はとにかく赤字で自転車操業を強いられるので、いくら借金をすれば、このラウンドを乗り越えられるのか頭を悩ませます。
次のフェーズはスタートプレイヤーの競りです。このゲーム中最も重要なフェーズなのではないでしょうか?当然、お金を吊り上げていくのですが、1番最初に降りたプレイヤー以外はお金を多少なりとも支払わなくてはいけない。スタートプレイヤーはこのゲームではとても重要ですので、何とかいいポジションを確保したいところなのですが、破綻しないように注意が必要ですので、いくらまで突っ込むのかが悩ましいところです。
その次は特殊アクションの早取りとなるのですが、これがこのゲームでも熱いポイントだと思います。特殊アクションは機関車のグレードアップや都市化、線路や商品輸送の優先権などどれも強力かつ、ゲームの進み具合で徐々に全員欲しいものが被ってきます。面白いのはゲームの進み具合によって、人気のアクションが出てくるところですね。特殊アクションは早取りなので、相手よりも早くアクション選択をしたくなります。特に中盤から後半は機関車グレードアップはとにかく人気ですね。ああ、スタートプレイヤーが欲しい(お金がない)。
あとは線路の敷設、商品の輸送とフェーズは移ります。基本的には線路を都市から都市へつなぐ事でそこの路線をプレイヤーが確保でき、商品の輸送は、都市ごとに決められた需要に対して、キューブを運んでいきます。キューブの通った路線の所有者は、1金が収入として入ってくるようになります。序盤はとにかく目先の利益で何とか赤字を埋めようと奔走しますが、中盤からは商品を以下に遠くに運ぶか、そして如何に自分の路線を通すのかで悩むことになります。輸送の出来る距離は自分の機関車レベルによりますが、機関車レベルは前述の特殊アクションか商品を運ぶ代わりに選択する事で上げる事ができます。商品の輸送は収入に直結するので、なるべくなら特殊アクションでレベルを上げたいところですね。
もちろん、商品は全プレイヤー共通なので輸送しようと思ったら、他のプレイヤーに先に輸送されている・・・なんて事もちらほら。
つらい。
そして、最後に収入とコストの支払いが発生します。コストは株の配当に加えて機関車レベルに応じた維持費の支払いとなります。遠くまで運びたいけど、支払いは厳しい・・・。
また、都市に商品が追加されるのも、このタイミングで発生しますが、どこに商品が追加されるのかはダイス次第となります。補充される予定の商品の種類はゲーム開始時に全て公開されているので、「次はあの商品が補充されるから、こういう風に路線を繋げとこう。」と考えていると、ダイス目に嫌われて補充されないなんて事もあります。
序盤の黒字に向けての自転車操業の悩ましさ、そして中盤以降の機関車や商品輸送の優先権争いなど、ゲームの進み具合によって悩むポイントは変化してくるのに、ゲーム終了までずっと悩みが尽きないと言うインタラクション満載のゲームとなっています。非常にキツいです。しかし、その中で四苦八苦しながら、線路を広げて商品を運んでいくのはとても面白いです。考える事満載なので、ゲームに慣れた方向きではありますが、その面白さは折り紙付きです。
余談ですが、ちょっと蒸気の時代はキツすぎるなと思ったら、少し緩めになった同作者のレイルウェイズ・オブ・ザ・ワールドシリーズも面白いですよ。
ルールの複雑さ: | (6.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (8.0 / 10) |
やすやすのレビュー
このゲームはハイエナを思い出しますね、「〇〇に群がるハイエナ」という言葉を。新都市や商品に、プレーヤーは飢えているのです。
他のレビュアーが、メタ的視点やシステムについて書いてくれてると思うので、ぼくはゲームの「手触り」を書きたいと思います。そうは言っても言葉通りの「触感」という意味ではなく、まぁ、要するに「遊んでみてどんな風に感じているか」という、個人の感覚の話です。
ピック&デリバリーにもいろいろな種類があると思いますが、特に鉄道ゲームのフレーバーとは相性が良いように思います。そのため、まず蒸気の時代DXの特徴として、重いゲームであるにも関わらずゲーム進行の理解が比較的早そう、ということがあげられますね。そしてさらに、マップやタイルのデザインが上手く抽象化デザインされていることや、洗練されたパラメータボードがフェイズ進行の見通しを良くしています。プレーヤーが直感的にゲームを知ることの一助になっています。つまり蒸気の時代DXは、重いゲームのわりに遊び方が分かりやすい、です。
その進行の分かりやすさに反して、旧来的にシビアな部分も目立ちます。最たるものは手番順の競り、そこから派生する脱落です。先手番が有利なことが明確なシステムでそれを競争させるのは分かるのですが、じゃ、その有利さは金にしたらいくらか、ということを常に問われるのは少し大変だなぁと感じます。また、支払いができなければゲームから即脱落するシステムのため、その競りはもちろん、一挙手一投足がゲームにより問われているかのような印象を受けます。
際立つ「厳しさ」を「分かりやすさ」で包みマイルドにしたゲームも多い中、その両者を混ぜ合わせず、スパイスのように刺激として前面に押し出すことでコアなファンを獲得しているのが、この蒸気の時代DXなのかな、と思いましたね。大量のマップが同梱もしくは別売され、お好きな方には味変を心行くまで楽しめる環境になってもいることからも、それが分かります。
ソロプレイも遊んでみましたが、これはかなり面白いです。複数人プレイ時の苛烈さとは異なるシビアさが求められ、繰り返しプレイにも耐え得るものとなっていました。お持ちの方は、ぜひ一度ためしてみてくださいね。
ルールの複雑さ: | (7.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (7.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |