移民を味方につけて、ニューヨーク市長の座を目指せ!プレイヤー間でのバチバチのインタラクションに痺れるエリアマジョリティゲーム。(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
日本のボードゲーマー界隈ではネットミーム化しつつある作品。
果たして本当にタマニーホールはマルチゲームなのか。
箱絵がゲームの内容を物語っているね(笑)
便宜チップの握りが熱いバチバチのエリアマジョリティ。移民を味方に付けるのが勝負のカギ!
「エリアマジョリティ ⇒ 市長選挙」という、システムとフレーバーが素晴らしく一致した、オールドタイプ寄りの熱く激しい闘いを繰り広げる(ことになってしまう)ゲーム。
ヒゲおすすめ度: | (7.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (6.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (6.0 / 10) |
Average: | (6.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
『タマニーホール』はマルチゲームなのか?
本作『タマニーホール』は移民が流入してくる頃のニューヨーク市長選挙をテーマにしたゲームです。
そういえば、高校生のときに当時の彼女と『ギャング・オブ・ニューヨーク』(ディカプリオ主演の奴)を見に行ってなんとも言えない空気になったのを思い出しました。思ったよりバイオレンスだった…
さて本題です。
ボードゲーマーのTwitterで『タマニーホール』の名前はマルチゲームの代名詞的に扱われ、ネットミーム化している感じはあります。正直、マルチゲームと聞くとあまり積極的にプレイしたいとは思わない方なので、手を出さずにいました。
先日、たまたまプレイすることになりやってみたところ非常に楽しくプレイ出来ました。
表題の問いに関しての私の答えは「タマニーホールがマルチゲームかはプレイ人数次第」です。
集合知としてBGGのベストプレイ人数を見るとこのゲームの最大人数である5人と出てきます。
確かに、このゲームの神髄を味わおうと思うと5人プレイがいいようには感じますが、5人プレイだと情報過多気味のマルチゲームという様相を呈してくると思います。
私の初回プレイは3人プレイでした。システムの詳細については他のレビューアーがしてくれるはずなのでここでは書きませんが、3人または4人プレイだと市長を取ったプレイヤーにも選択の余地があることがプレイ感に大きく影響を与え、また人数が少ない方が比較的見通すことができるマジョリティゲームという印象が強くなります。
特に3人プレイはかなりいいと思いました。4回ある選挙において2回で市長になるということを目指していく形になり、その調整が3人なら対戦相手2人の情報を整理するだけで済むので、見通しが立ちやすいからです。また選挙に使う区がラウンドで徐々に開放されていくのも戦略が広がっていってわかりやすく感じました。
システムは2000年代特有の剝き出しのインタラクションでヒリヒリした感じはありつつも、プレイ人数次第でマルチにもクラシカルなマジョリティ争いのゲームにもなり得ると感じました。エルグランデ辺りが好きな人は一度ネットミームの先入観を捨ててプレイしてみてほしいです。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (5.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |
NEZのレビュー
握り要素の駆け引きに唸る、バッチバチのエリアマジョリティ。
NYの市長を目指した選挙戦のゲームです。複数のエリアに区分けされたニューヨークを舞台に、決められたラウンドで行われる選挙に対して各エリアでのマジョリティを競う事でNY市長の座を射止めるゲームになっています。
基本的に手番では手持ちの有力者コマ、または共通のエリアに置かれた移民コマをエリアに配置するだけと言うシンプルさです。では、このゲームの特徴はなんなのかと言うお話になるのですが、それはやはり「移民コマ」の存在と、それに大きな関係のある「便宜チップ」と呼ばれるトークンです。
そもそも、このゲームでは選挙では移民コマはマジョリティ争いには直接関係はしません。
どのように関係してくるかと言うと、マジョリティ争いに使う便宜チップをそのエリアで使用するために必要なのです。
このゲームでのエリアごとのマジョリティ争いは有力者コマと便宜チップの合計です。便宜チップは、そのエリアに置かれている移民コマに対応するもの(例えば、イタリア系移民がいるエリアならイタリアの便宜チップなど)しか使う事ができず、さらに便宜チップは握る前に合計を確認し、相手がいくつ便宜チップを持っているか把握したうえで、秘密裏にチップを握っていきます。これはもういやらしいとしか言いようがないですね。しかも、便宜チップは握るとマジョリティ争いに勝とうが負けようが使った分は捨てられてしまいます。数を確認しているので、「今後の事を考えたら、たくさん握るふりをして相手の便宜チップをここで捨てさせておこう。」などと企む事も可能です。この辺のブラフも絡んだマジョリティ争いは非常に面白いと感じました。
また、移民コマはボード上に置かれているので、便宜チップと合わせて誰がどのエリアで有利なのかが見えています。そのあたりも考慮に入れつつ、どこで勝負を賭けるのかを考えていく必要があります。
選挙は1回のゲーム中に複数回発生し、その都度市長となるプレイヤーが決まります。市長になる事で、追加の勝利点を獲得できるほか、他のプレイヤーに役職を与える事ができます。この役職がとても曲者で、非常に強力な効果を与えます。例えば、移民コマを移動したり、コマを置けないようにしたり、便宜チップを獲得できたりと言った具合です。市長自体は何も効果はありませんので、次の選挙まではより強力になった他プレイヤーと戦う事になります。これは市長の交代を促すとともに、このゲーム中、何回市長を獲得出来るかがカギとなるように意図されているように感じます。
ボードも非常に雰囲気が出ていてGoodですし、アクション自体も非常にシンプルで遊ぶだけなら簡単ですが、その内に秘めたバチバチのインタラクションはゲームに慣れた方向けだと思いました。
ルールの複雑さ: | (6 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8 / 10) |
運の要素: | (3 / 10) |
おすすめ度: | (6 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7 / 10) |
やすやすのレビュー
本物の(不正はびこる)選挙さながらに、盤外戦がアツいと言わざるを得ない。
タマニーホールと言えばただの選挙戦ではなく、利権や買収といった政治闘争の裏側にあるキナ臭さの代名詞。ゲーム内でも、次第に増えていく移民たちを権力や財力でコントロールし、いかに自分の影響力をニューヨークに及ぼすかという汚い争いを展開することになります。
こう書くと、何やら複雑で難しい権力闘争のように感じられるかもしれませんが、ゲームとしてはシンプルです。手番でできることの選択肢は少なく、最終的な勝者を決める得点の源も限られています。総じて複雑ではないため、題材のわりに、プレーヤーは早い段階でゲームの流れやポイントなどを理解できることでしょう。
しかし、このタマニーホールの醍醐味は、全員が流れを把握したその頃から始まる熾烈な盤外戦にある、とぼくなんかは思うわけです。ゲームシステムから少しだけ外にある、人間たちの政治力によるインタラクションの始まりです。
要するに、インタラクションたっぷりのシステムになっていて、自分ひとりが上手くやれば勝てる、というタイプのゲームには全くなっていません。ちなみにこれらのポイントは、現実の選挙戦でもそのまま当てはまるのではないでしょうか。これくらいの方が、個人的にはリアリティを感じますね。
ちなみにコンポーネントがすごく良くできていて、雰囲気たっぷりです。プレーヤー人数が少なくても最終的には盤面を広く使うことができ、昔のニューヨークの街を舞台に遊んでいる感じがたまらないですね。
なおゲームシステム側では、負けているプレーヤーの救済策(傾斜や逆転要素)があまり用意されていないので、バランスはプレーヤー間でとっていく必要があります。盤面の状態から有利なプレーヤーをあぶりだし、一人が抜き出ないように他の全員で、あえての団子状態を作る必要がありますね。
これができるプレーヤー同士で遊べるならば、濃密で充実した楽しい時間を過ごすことができそうです。ボードゲームに慣れないプレーヤーを加える場合は、初心者の方が人数が多くなるようにプレーヤー比率を調整すると良いでしょう。
ルールの複雑さ: | (7.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |