金額無制限のブラインドオークション。でも、一番お金を使ったら怒られます。(NEZ)
ボドゲレビュアーズによるオススメ度の一覧と平均値
予算無限の競りゲーム!
競りゲームの根幹をひっくり返すコペルニクス的転回。
お金をいくら使ってもよいけど、ゲーム終了時に一番お金を使ってると脱落させられるドラえもんの秘密道具みたいな競りゲーム。競りゲームに慣れてないと辛いけど、相場感を探っていくのが楽しいね!
「もしお金が無限にあったら」という甘い体験をさせてくれる、夢のようなエミュレーターかな(実際は甘いどころか辛い)。
ヒゲおすすめ度: | (6.0 / 10) |
NEZおすすめ度: | (6.0 / 10) |
やすやすおすすめ度: | (7.0 / 10) |
Average: | (6.3 / 10) |
各レビュアーによる個別レビュー
ヒゲのレビュー
予算無限という発想が生んだリノベーション。
皆様、苦手なゲームシステムはありますか?
この質問に対して割と多い返答は『正体隠匿』『直接交渉』『直接攻撃』、そして『競り』です。
競りゲームを苦手とする人は初心者だけでなく上級者でも一定数いて、理由を尋ねると「初見では相場が分からない」という答えが多いように思います。
ボードゲームの歴史上、『競り』のシステムの流行というのが2000年周辺で終わりを迎え、以降のゲームではあまり採用されなくなっていった経緯があります。これ以降には、『アクションポイント制』そしてすぐに『ワーカープレイスメント』が出現していきます。
この流れで重要なことは、プレイヤーのアクション選択におけるコストの簡略化です。
競りゲームでは所持金からいくら入札するかを細かく選択することができ、これが難しいと感じる要素になっています。アクションポイント制だと決められたアクションポイントの振り分けとシンプルになり、ワーカープレイスメントになるとなんとコマを置くだけです。もちろんアクション選択のコストは簡略化された一方で、できるアクションの種類は増えていったというのが2010年代くらいのトレンドなのかなと思います。
だいぶ話が脱線しましたが、要するに競りゲームはもう流行ってないのです。
じゃあ、『Q.E.』は何をしたか。所持金という概念を無くしました。
一見するとこれはゲームバランス調整の放棄にも見えますが、実際にプレイしてみるとプレイヤー間で勝手にバランスを取るようにできています。(ちょっと欠陥はあるけど)
この辺りのバランス調整をデザイン時点でしていなくても、プレイヤーに丸投げしてしまってもなんとかなるという逆転の発想。もちろん『ハイソサイエティ』から拝借しているであろう脱落システムが効いているからです。
比較的軽いプレイ感も相まって、2019年の製品版発売から非常に人気の作品になりましたね。
まだ競りゲームにこんな可能性が残されていたかと感心しました。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (6.0 / 10) |
運の要素: | (6.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
NEZのレビュー
テッテレー!Q.E.!!
一国の宰相となって、企業買収をしていく競りゲームです。何と言っても、その特徴は「金額無制限、ただしゲーム終了時に使った額が一番多いと脱落」と言うルールでしょう。まるで、ドラえもんの秘密道具。
金額無制限ですので、お金を示すコンポーネントは無く、ホワイトボードに金額を記入して提示していきます。小切手を切ってるみたいですね。楽しい。
残金を気にすることなく、好きな金額で入札できると言うのはとても面白いですが、ゲーム序盤は特にいくらを提示すればいいのか悩むかもしれませんね。
そして、もう1つの特徴は入札額非公開と言うルールです。
ラウンド開始時に、親プレイヤーは競売対象の企業タイルに対して落札額を提示し、他のプレイヤーは入札拒否を示すか、さらに高額な落札希望額を記入して、親に秘密裏に渡します。親はそれを確認して、入札拒否したプレイヤーの公開と落札額を企業タイルに記入して、提示したプレイヤーに企業タイルを譲渡を行います。
この『秘密裏』と言うのがポイントで、親は全てのプレイヤーの入札額と言う情報を得られますが、子は親の提示額と落札者(落札額は落札者と親しか知りません)と言う極めて限定的な情報しか得られません。これによって、「この金額では落札できないのか。」「親は相場感をこれくらいで見てるのか。」など、少しずつゲームの相場感を推測して、そこに擦り合わせていく形でゲームが進行していきます。
これは、競りに慣れたプレイヤーにとっては面白いポイントだと思いますが、慣れていないプレイヤーにとっては、難しい部分になると思います。金額の上限がない、一番お金を使ってると脱落してしまうと言うのも、この難しさに拍車をかけている気がしますね。
勝利点の獲得に関しては獲得した企業カードのセットコレクションやマジョリティなど難しいものはないため、特筆すべき部分はないかなと言う印象です。
競りに慣れたプレイヤー同士で楽しむか、いっそのこと金額無制限での入札をワイワイと楽しむか。そう言ったゲームではないかと思います。
ルールの複雑さ: | (4.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (8.0 / 10) |
運の要素: | (4.0 / 10) |
おすすめ度: | (6.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (6.0 / 10) |
やすやすのレビュー
もしかしたら現実世界のマネーゲームも、こんなことになっているのかもしれないぞ。
手番プレーヤーが宣言した(公示)価格に対し他の人に分からないように各プレーヤーが入札し、その中で最高値を付けた人が落札するのですが、その落札価格を手番プレーヤー以外には公表しないというタイプのオークションゲームです。
このゲームの最大の肝となるのは「所持金は無制限」である、と言いたくなるところですが、ぼくとしては「落札価格は非公開」をポイントにあげます。どちらも、あまり耳にしない仕組みだとは思いますけど。
落札価格が公開されないと、当事者たち以外には「自分の入札金額では落札できなかった」という事実しか残りません。そのため各オークション後にも不可解な部分が残り、疑心暗鬼が生まれます。このゲームは、そのモヤモヤした気持ちを飼い慣らし経験則として積み重ね、盤外コミュニケーションも駆使しながら相場観を探っていくことが、目的であり醍醐味になります。
しかしどうでしょう、現実のオークションにこういった仕組みはあるのでしょうか。出品者と落札者しか価格を知れないのなら、共謀すれば不正がヤリ放題であるような気がしますね。さすがにないのかな。ご存知の方がいらしたら、教えてください。
さて。
どうしても書きたいことがあります。それは、このゲームには(ぼくにとって)システム上の問題点があるように感じているということです。
ゲーム終了時に消費金額が最高値のプレーヤーのみ、脱落する。
所持金が無制限であることは、とてつもなく楽しいことです。ただしそれだけではゲームとして成立しないので、そのブレーキとしてこのルールが存在してい(るように思い)ます。
しかしぼくはこのルールだけではブレーキとして不十分であると思うのと、(分かりにくい表現になりますが)ブレーキに対するガードレールがないため、その使い方によっては、せっかくのゲームが破綻する可能性があることは否めません。
Q.E.は、自由度が高く非常に楽しいゲームです。参加者全員がきちんとルールを把握し、最後まで勝利をあきらめないという紳士協定を守ることで、他のゲームでは味わえない特別なプレイ感に酔いしれることができます。
「オークション(競り)ゲームはちょっと…」という方は多くいらっしゃると思いますが、このゲームはちょっと特別です。ぜひ一度、プレイしてみてくださいね。
ルールの複雑さ: | (5.0 / 10) |
プレイヤー間の駆け引き: | (9.0 / 10) |
運の要素: | (3.0 / 10) |
おすすめ度: | (7.0 / 10) |
自分は好きですけ度: | (7.0 / 10) |